メーカーECへの転職を考えるとき、「メーカーECは経験として良いのか」という聞き方になりがちです。ただ、同じメーカーECでも、任される仕事は会社によってかなり違います。
この記事は、メーカーECを勧めるための記事ではありません。自分が次に取りたい経験を先に決めて、その経験を取れる会社かどうかを求人と面接で確かめる、という順番で考えるための記事です。
この記事でわかること
- 「メーカーECに行けば経験が積める」とは限らない理由
- 次に取りたい経験を先に決めるための棚卸し
- 仕事内容を分ける「誰が手を動かすのか」という観点
- 業務範囲・商品力・裁量を、求人と面接でどう確かめるか
- 転職を急がなくていいケース
「メーカーECに行けば経験が積める」とは限らない
メーカーECという区分は、会社の立ち位置を表しているだけで、仕事の中身までは決めません。自社商品を扱うという共通点はあっても、担当範囲も、判断できる範囲も、使える予算も会社ごとに違います。
そのうえで、私がEC領域をキャリアの軸にしたのは、いつか自分でものを売ることを考えたときに、店舗で売るイメージよりECで売るイメージのほうが圧倒的に強かったからです。今後もECでものが売れる流れは強くなると考えていて、仕事としての需要もあると思いました。だからECに絞ってキャリアを築くことにした、という順番です。
これは私の選び方であって、誰にとっても正解という話ではありません。大事なのは、どの区分の会社に行くかより、そこで何を経験できるかだと思っています。
まず、次に取りたい経験を決める
「メーカーECに転職すれば市場価値は上がりますか」と聞かれたとき、私がまず勧めるのは棚卸しです。
転職を考える前に整理すること
- 今まで何を経験したのか
- いま何が足りないと感じているのか
- 次に何を経験したいのか
そのうえで、もうひとつ考えたいことがあります。ECの知識自体は、自分で勉強して身につけられる部分があります。モールの仕様も、広告の仕組みも、調べれば分かることは多い。だから分けて考えたいのは、転職しなければ取れない経験は何かです。
私の場合は、幅広いモールを経験したい、自分で判断して施策を実行したい、という2つがありました。売上を伸ばせる自信もあったので、それを試せる環境を求めていました。この整理ができていると、求人を見るときに何を確認すればいいかが決まります。
これまでの経験をどう言葉にするかは、EC担当の「実績」とは何かで整理しています。
仕事内容を分けるのは「誰が手を動かすのか」
会社によってEC担当の仕事は違いますが、共通して感じるのは業務範囲が広いということです。モール運営、広告、商品ページ、在庫、社内調整。どこまでを担当するかは会社によりますが、関わる領域が多いのは共通しています。
そのなかで私が求人を見るときに確認したいのは、誰が実際に手を動かすのかです。
代理店など外部パートナーを使っていて、担当者は全体の管理や判断を担う会社があります。一方で、担当者自身が入稿や設定まで手を動かす会社もあります。大きな会社ほど外部に出している、小さな会社ほど自分でやる、という傾向を感じることはありますが、実際は会社ごとに違います。規模だけで決めつけず、求人票と面接で確かめるのが確実です。
どちらが良いということでもありません。手を動かす経験を積みたいのか、判断する側の経験を積みたいのか。前の章で整理した「次に取りたい経験」によって、合う環境が変わります。
業務範囲と、キャリアにつながる時間
私がいま転職するなら、特に見るのは業務範囲です。
EC運営には、受注対応も、商品登録も、請求や契約の処理も必要です。こうした業務に価値がないとは思いません。ただ、一日の時間は限られているので、分析して課題を見つけたり、施策を決めて検証したりする時間がどれくらい取れるのかは確認したいところです。
求人票では「EC運営全般」とだけ書かれていることも多いので、中身は面接で聞くことになります。何にどれくらいの時間を使っているのか、日常の運用と改善の仕事の比率はどうか。この聞き方は、EC担当の求人票の読み方とあわせて使うと整理しやすくなります。
商品力をどう見るか
私は商品力をかなり重視します。商品が強いほうが、EC担当として打てる施策の幅が広くなりやすいと感じているからです。価格で勝負しなくても売れる状態なら、ページや広告、CRMなど試せることが増えます。
逆に、商品自体に大きな課題がある場合、EC側の施策だけでは成果につながらないことがあります。そうなると、商品の課題が残ったまま、短期的な販促に寄りすぎることもあります。
ただ、商品が強ければ必ず成長できる、という話でもありません。強い商品を売っていると、自分の施策の効果が分かりにくくなることもあります。これはあくまで、私が転職先を見るときに重視している観点です。
確認の仕方としては、商品そのものを調べるのが先です。レビュー、競合との価格差、売り場での見え方。そのうえで、面接で聞ける範囲なら、EC売上の規模やCVRといった数字も確認したいところです。ただ、社外に出せない数字もあるので、聞けば必ず答えてもらえるとは限りません。
裁量は「大きいほど良い」ではない
経験を広げやすいと感じるのは、担当者レベルにも一定の裁量がある会社です。自分で考えて、施策を実行して、うまくいった・いかなかったを経験して、振り返る。この流れを自分で回せると、経験の密度が変わります。
ただ、裁量が大きいほど良いとは思っていません。経験が浅いうちは、判断の基準を上司や先輩から学べる環境のほうが合うこともあります。何を見てその施策を選んだのか、なぜ却下したのか。その理由を近くで見られることは、それ自体が経験です。
目安としては、判断の仕方を学びたい段階なら、相談できる相手がいる環境。ある程度自分で判断してきた人なら、自分で決めて動かせる環境。ただし年次で切れる話ではないので、自分がいまどちらを必要としているかで考えるのが現実的だと思います。
メーカーECへの転職で確認したい5項目
ここまでの観点を、求人票と面接で確かめる形にまとめます。年収や条件面はもちろん見るとして、それとは別に確認したい5つです。
| 確認項目 | 求人票・面接で見るポイント | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 業務範囲 | 仕事内容の箇条書き、1日の流れの説明 | 運用と改善に、それぞれどれくらい時間を使うのか |
| 誰が手を動かすのか | 体制の説明、代理店や制作会社の記載 | 実務を担うのは自分か、外部か、分担はどうなっているか |
| 裁量・意思決定 | 求める人物像、決裁の説明 | 施策や予算を自分で決められる範囲はどこまでか |
| 商品力 | 商品ページ、レビュー、競合比較、EC売上の説明 | いまどう売れていて、何が強みなのか |
| キャリアにつながる業務 | 募集背景、入社後に期待すること | 次に取りたい経験が、この仕事の中にあるか |
面接でどう踏み込んで聞くかは、EC担当の転職面接で確認したいことで扱っています。なお、EC以外の部分、たとえば一緒に働く人や組織の雰囲気が大事なのは、他の職種と同じです。
「今の経験 → 次に欲しい経験 → 求人で確認すること」でつなぐ
棚卸しと5項目をつなぐと、求人の見方が具体的になります。考え方の例を3つ挙げます。
| 今の経験 | 次に欲しい経験 | 求人で確認すること |
|---|---|---|
| 1モールの運用を担当している | 複数モールを横断して見る | 担当チャネルの数と、自社ECを含むかどうか |
| 施策は上長が決めている | 自分で施策を決めて検証する | 施策の決裁ラインと、予算をどこまで動かせるか |
| 代理店のレポートを受け取る側 | 提案を評価して方針を出す | 代理店との役割分担と、定例での担当者の役割 |
この形にしておくと、面接で「何を聞けばいいか分からない」という状態になりにくくなります。
転職を急がなくていい場合もある
相談を受けていて、「今の会社、かなりいい環境なのでは」と思うことがあります。担当範囲が広く、裁量もあって、学べることがまだ残っている。そういう場合は、転職そのものを目的にする必要はありません。
次に取りたい経験が決まったら、まずそれが今の会社で取れないかを確認してみてください。別のモールを担当させてもらう、分析まで任せてもらう、代理店との定例に入る。社内で頼んでみて動く余地があるなら、転職しなくても経験は増やせます。確かめ方は今の会社で市場価値を上げられるか確認したい5つの条件で整理しています。
そのうえで、今の環境では取れない経験だと分かったときに、転職が選択肢になります。
見るのは「メーカーECかどうか」ではない
メーカーECに転職すること自体に価値があるわけではありません。価値があるとすれば、そこで取れる経験のほうです。
自分はこれまで何を経験してきて、次に何を経験したいのか。その経験は、この求人の仕事の中にあるのか。業務範囲、誰が手を動かすのか、どこまで自分で判断できるのか、扱う商品はどうか。この4つを確かめられれば、メーカーECかどうかという区分より、ずっと具体的に会社を比べられます。
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