「EC担当として働いているけれど、自分に何ができるようになったのかが説明しにくい」。EC担当の仕事は商品登録から広告、モール運営、在庫、分析まで幅が広く、会社によって担当範囲もまったく違うので、こう感じるのは自然なことだと思います。
この記事は、ECの具体的な業務を実行する力・分析・改善する力・設計・説明する力の3つに配置して、自分の経験を棚卸しするためのスキルマップです。「広告運用の経験があります」で終わらせず、その業務をどこまで担当してきたのかを言葉にできる状態を目指します。
この記事でわかること
- ECの業務を3つの力に配置したスキルマップ
- 同じ業務でも、担当範囲によって使う力が変わること
- 「どこまで担当したか」を確かめるための見方
- 次にどんな経験を取ると、担当範囲が広がるか
「経験あり」だけでは、何ができるかが伝わらない
ECのスキルはよく、広告運用ができる、モール運営ができる、データ分析ができる、という形で語られます。どれも必要な仕事です。ただ、これは業務の名前であって、その中で自分がどこまでやっていたかまでは伝わりません。
同じ「広告運用の経験あり」でも、代理店が作った内容を入稿していた人、数字を見て改善案を出していた人、予算配分そのものを決めていた人では、中身がまったく違います。この差を自分で把握しておくと、次に何を経験すればいいのかも決めやすくなります。
そこでこの記事では、ECの業務を次の3つの力に分けて並べます。実行する力、分析・改善する力、設計・説明する力です。それぞれの力が何を指すのかは、EC担当の仕事で使う3つの力で詳しく説明しているので、概念から知りたい方はそちらを先に読んでください。ここでは、具体的な業務への当てはめに集中します。
先にひとつ補足しておくと、この3つは上下関係ではありません。担当範囲が広がると、それまでの力を捨てて次へ進むのではなく、使う力が追加されていくという形になります。予算配分を決める立場になっても、商品登録や入稿の実務を理解していることは前提として効いてきます。
ECスキルマップ|業務ごとに使う力を並べる
主なEC業務を、3つの力の観点で並べたものが次の表です。左から右へ進むほど偉い、という意味ではありません。同じ業務でも、担当範囲によって使う力が変わることを見てください。
| 業務・経験 | 実行する力 | 分析・改善する力 | 設計・説明する力 |
|---|---|---|---|
| 商品ページ | 登録、更新、画像差し替え | 離脱や転換率から改善点を決める | 訴求の方針を決め、制作やブランド側と合意する |
| 広告運用 | 入稿、設定、日々の調整 | 成果を見て配信や訴求を改善する | 予算配分と広告の役割を決め、社内や代理店に説明する |
| CRM | メルマガ・LINEの配信 | 開封や再購入から内容と頻度を見直す | 新規とリピートの比率をどう作るかを決める |
| 在庫管理 | 在庫更新、発注の起票 | 欠品や過剰在庫の原因を数字で確認する | 販売計画と生産・仕入の調整方針を決める |
| モール運営 | セール設定、クーポン、店舗運用 | イベントごとの成果を比べて打ち手を変える | どのモールに何を出すか、チャネルの役割を決める |
| データ分析 | レポートを作成する | 売上をアクセス・転換率・単価に分解する | どのKPIを追うかを決め、社内に共有する |
| 予算管理 | 実績を集計する | 費用対効果を見て配分を調整する | 年間の予算を組み、利益まで含めて判断する |
| 代理店管理 | 依頼と進行の管理 | レポートを読み、提案の是非を判断する | 自社と代理店の役割分担を決め、評価軸を作る |
| 社内調整 | 依頼された連絡・共有を行う | 目的と課題を整理して相談する | 承認を取り、関係部署を巻き込んで実行まで進める |
この表の使い方は単純です。自分が経験してきた業務の行を見て、どの列まで自分がやっていたかを確かめます。全部の行が埋まる必要はありませんし、埋まっていない列があっても問題ありません。
同じ業務でも、担当範囲で使う力は変わる
分かりやすいのが広告運用です。「広告運用の経験があります」と言ったとき、実際には次のどこまでを担当していたかで、話せる内容が変わります。
広告運用の場合、どこまで担当していたか
- 広告を入稿し、設定して、動かしていた
- 成果を見て、配信先やクリエイティブを変えていた
- いくらをどの広告に使うかを決め、その理由を社内や代理店に説明していた
CRMなら、配信までなのか、開封や再購入を見て内容を変えていたのか、新規とリピートの比率をどう作るかまで決めていたのか。在庫管理なら、更新までなのか、欠品の原因を数字で追っていたのか、販売計画と合わせて調整していたのか。同じ業務名でも、この違いがそのまま経験の違いになります。
棚卸しのときは、業務名の後ろに「どこまで」を付けて書いてみてください。「広告運用(入稿と日々の調整まで。予算配分は上長が決定)」のように書くと、自分の担当範囲がはっきりします。数字を分解する視点をもう少し整理したい場合は、ECのKPIとは?売上のどこに問題があるかを分解するための数字が参考になります。
実行の経験は、後の判断の土台になる
商品登録、広告入稿、在庫更新、CRM配信。こうした実務は、EC運営に欠かせない仕事です。そして、経験しておくと後から効いてきます。
どこでミスが起きやすいか。作業の負荷がどこに集中しているか。データがどういう形で作られているか。現実的にどこまで実行できるのか。これらは、実際に手を動かしたことがあるかどうかで見え方が変わります。実行を知らないまま立てた計画は、現場で回らないことがあります。
自分の場合、最初に担当したEC業務は商品マスタの作成でした。その後、広告やモール運営、分析、予算、代理店とのやり取り、事業全体の話へと、関わる仕事が増えていきました。振り返ると、段階を上っていったというより、同じEC業務でも見る範囲が広がっていったという感覚が近いです。商品データの作られ方を知っているから、売れない原因を考えるときに商品情報まで疑えますし、入稿を自分でやっていたから、代理店のレポートで何が省かれているかに気づけます。
棚卸しの結果から、次に取る経験を決める
表を埋めてみると、自分の経験がどこに集まっているかが見えます。実行の列に集中しているなら、次は数字を見て改善案を出すところまで踏み込んでみる。分析まで届いているなら、複数の施策に優先順位を付けて、決めた理由を残してみる。改善まで回せているなら、予算の配分や代理店との役割分担の話に入ってみる。
どれも、必ずしも転職しないと取れない経験ではありません。ただ、今の環境で取りにいけるかどうかは会社によります。その判断の仕方は、今の会社で市場価値を上げられるか確認したい5つの条件で整理しています。
なお、設計・説明まで担当していれば評価が高い、実行が中心だから評価が低い、という話ではありません。評価は、応募する企業やポジション、担当範囲、実績によって変わります。評価のされ方そのものはEC担当の市場価値とは何かで、責任者に近づくと何が変わるのかはEC責任者とEC担当者の違いで扱っています。
棚卸しの目的は、自分を採点することではありません。どの業務を、どこまで担当してきたのか。それを言葉にできれば、次に取りたい経験も、職務経歴書に書く内容も決めやすくなります。
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