EC責任者コース LEVEL1|役割転換する(発展教材)
「自分の市場価値はどれくらいなのだろう」。EC担当として働いていると、一度は考えるテーマだと思います。売上は伸びている。広告も回している。モールも管理している。それでも、年収が上がらない、評価の基準が分からない、転職市場で通用するのか分からない、という感覚は残りやすいものです。
この記事では、EC Career Labが自分の経験を整理するときに使っている考え方を紹介します。成果・再現性・組織通過力という3つの視点です。市場価値を測る公式ではなく、自分の経験を言葉にするための枠組みとして読んでください。
この記事でわかること
- EC担当の評価が、ひとつの公式では決まらない理由
- EC Career Labが経験の整理に使っている3つの視点
- 成果・再現性・組織通過力をどう捉えるか
- 自分の経験を棚卸しするための質問
- 市場価値と、進みたいキャリアの方向は別のテーマだということ
市場価値は、ひとつの公式では決まらない
先に前提をはっきりさせておきます。EC担当の市場価値が、決まった計算式で出せるわけではありません。
実際の評価は、応募する企業やポジション、そこで任される担当範囲、業界や会社の規模、これまでの経験と実績、マネジメント経験の有無、そしてその時期の求人の需給によって変わります。同じ経歴でも、ある会社では即戦力と見られ、別の会社では役割が合わないと判断されることがあります。
だからこの記事で扱うのは、評価の点数ではありません。自分の経験を、相手に伝わる形でどう整理しておくか、です。
なぜEC担当は、自分の評価が見えにくいのか
成果と自分の関与を切り分けにくい
ECの売上は、商品の力、ブランドの認知、広告予算、市場の伸び、価格、在庫、そして自分の施策など、複数の要因が重なって動きます。売上が伸びたとき、そのうちどこまでが自分の判断によるものかを完全に切り分けることはできません。
つまり「売上が伸びた=本人の実力」とは限らないということです。逆に、売上が横ばいでも、下がり方を食い止めた判断があったかもしれません。数字だけを見ても、その人が何をしたのかは見えないのです。
担当範囲が会社ごとに違う
同じ「EC担当」でも、商品登録と受注対応が中心の人もいれば、広告予算を持って施策を設計している人もいます。代理店と年間計画をすり合わせている人もいます。経験年数だけでは、何ができる人なのかが伝わりません。
評価基準も会社によって変わります。売上で見る会社もあれば、利益や在庫回転を重く見る会社もあります。自分の評価が見えにくいのは、能力の問題ではなく、こうした事情が重なっているからだと考えています。
EC Career Labでは、3つの視点で経験を整理している
こうした前提があるので、EC Career Labでは、EC担当の経験を次の3つの視点で整理しています。市場価値がこの3つで決まる、という意味ではありません。自分の経験のどこが説明できていて、どこが説明しきれていないのかを確かめるための、独自の整理の仕方です。
成果|何を、どこまで変えたか
成果は、売上金額の大きさだけを指していません。何を改善したのか、その結果どの数字が変わったのか、そこに自分はどこまで関与したのか。この3つがそろって、はじめて成果として説明できます。
前の章のとおり、強いブランドや市場の成長など、自分以外の要因で数字が動くことは普通にあります。だからこそ、「自分が関与して変わったのはどこか」を分けて話せることが大事になります。実績をどう捉えるかは、EC担当の「実績」とは何かで詳しく扱っています。
再現性|判断の背景を説明できるか
再現性というと、「別の会社でも同じ成果を出せる能力」のように聞こえますが、そういう意味では使っていません。商品も価格もチャネルも変われば、同じ施策が同じように効くとは限らないからです。
ここで見たいのは、なぜその施策を選んだのか、どんな仮説を立てていたのか、結果をどう解釈したのか、条件が変わったら次に何を見るのか。この4つを自分の言葉で説明できるかどうかです。同じ成果をコピーできることではなく、考え方や判断の進め方を別の状況にも当てはめられるか、という意味に近いと思ってください。
組織通過力|実行まで進めた道筋
組織通過力は、EC Career Labで使っている言葉です。意味は、自分ひとりでは完結しないEC事業の中で、施策を実行まで進める力を指しています。
具体的には、他部署との調整、予算の承認を取ること、上司や経営層への説明、代理店との役割整理、商品や物流、営業との連携などです。人当たりの良さや話のうまさといった意味でのコミュニケーション能力とは分けて考えています。良い施策を思いついても、在庫が足りない、卸先との関係がある、予算の枠がある、という理由で止まることは珍しくありません。そこを通して実行まで持っていけたかどうかが、経験として残ります。
責任者に近づくほど、この比重は大きくなります。役割の違いはEC責任者とEC担当者の違いで整理しています。
経験を棚卸しするための3つの視点
実際に自分の経験を振り返るときは、次の形で整理すると書き出しやすくなります。
| 視点 | 確認すること | 自分に問いかける質問 |
|---|---|---|
| 成果 | 何をどこまで変えたか | 自分が関与して変わった数字は何か |
| 再現性 | 判断の背景を説明できるか | なぜその施策を選んだのか |
| 組織通過力 | 組織の中でどう実行したか | 誰と調整し、どう意思決定を進めたか |
これは採点表でも診断表でもありません。3つすべてが埋まっていないといけない、という話でもありません。書き出してみて、どこが言葉になっていないかが分かれば十分です。
自分の経験を振り返ると、メーカー側と支援側の両方を経験してきた中で、転職時に整理しやすかったのは売上の数字そのものではありませんでした。なぜその結果になったと考えているか、社内でどう実行まで持っていったか。そこまで話せる経験のほうが、相手にも伝わりやすかったという実感があります。
年収と市場価値は、同じものではない
市場価値の話をすると、年収と結び付けて考えたくなります。ただ、社内の年収は、その会社の給与テーブル、等級、役職、評価制度に強く影響されます。業界や企業規模によっても水準は変わります。
つまり、経験が積み上がっていても、社内の制度上すぐには年収に反映されないことがあります。逆に、制度の恩恵で年収が高くても、説明できる経験が少ないこともあります。年収の目安や、会社によって差がつく理由はメーカーEC担当者の年収相場で扱っているので、そちらを参照してください。
市場価値を考えることと、進む方向を決めることは別
もうひとつ、混ざりやすいのがキャリアの方向です。管理職、ECスペシャリスト、EC責任者や事業責任者。どの方向に進むかは、市場価値の高い低いで決まるものではありません。
この記事で扱っているのは、自分の経験をどう整理するかという話です。どの方向へ進みたいかは、それとは別に、自分が何に関心を持てるかで考える話だと思っています。3つの方向の違いはEC担当のキャリアパスで整理しています。
棚卸しから、次の一歩を決める
3つの視点で書き出してみると、自分の経験のどこが説明できて、どこが薄いのかが見えてきます。成果は書けるけれど判断の背景が説明しにくい。実行はしているけれど、社内をどう通したかは意識していなかった。そうした偏りが分かれば、次に取りたい経験も決めやすくなります。
その経験を今の環境で取りにいけるかどうかは、会社によります。判断の仕方は今の会社で市場価値を上げられるか確認したい5つの条件で扱っています。
市場価値は、誰かが点数をつけてくれるものではありません。自分の経験を、成果・再現性・組織通過力という3つの角度から言葉にしておく。そのうえで、足りない部分を次の仕事で埋めていく。その繰り返しが、結果として評価につながっていくのだと思います。
はじめてのメーカーEC講座|STEP 5
この記事は「市場価値とキャリアを考える」STEPの一部です。
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EC担当の市場価値を考える5つの行動|次に積みたい経験
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