「EC担当はきつい」と言われることがあります。実際に働いていると、大変だと感じる場面はあります。
ただ、その大変さをひとまとめに「ECだからきつい」としてしまうと、次に何を変えればいいのかが見えません。仕事そのものの難しさと、いまの会社の体制や役割分担による負担は、分けて考えたほうがいいというのが、この記事の立場です。
この記事でわかること
- EC担当の仕事で、実務として大変だと感じる場面
- 管理画面の外で発生する社内調整の実例
- それでもECを面白いと思う理由
- 負担の大きさが会社によって変わる5つの環境
- 「仕事そのもの」と「いまの環境」を分けて考える整理
EC担当はきつい?実務では大変な場面もある
先に正直に書くと、EC担当の仕事には大変な場面があります。数字を追い続けること、関係者が多いこと、トラブルが突然起きること。どれも実務では日常的に起こります。
一方で、同じ「EC担当」でも、担当範囲も体制も会社によってかなり違います。一人で全部を見ている人もいれば、チームで分業している人もいます。商品の状況も、社内のEC理解も違います。だから「ECはきつい仕事だ」という一般論だけでは、自分の状況は説明できません。
この記事では、まず私自身が大変だと感じてきたことを書きます。そのうえで、どこまでが仕事そのものの性質で、どこからが環境によるものかを分けて考えていきます。
私がEC担当で特にきついと感じた3つの仕事
私自身がEC担当として特に大変だと感じてきたのは、売上責任、社内調整、トラブル対応の3つです。
売上責任は、ECに期待をかけている会社ほど重くなりやすいと感じます。全社の成長をECで作ろうとしている会社では、目標の伸び率も大きくなりがちです。売上は商品、価格、在庫、競合、季節など多くの要因で動くのに、達成していなければ説明を求められるのはEC担当です。ただ、これは会社や役職によって違います。数値責任を持たない立場もありますし、チームで分けている会社もあります。
社内調整は、ECの施策が他部門に影響しやすいことから生まれます。価格、在庫、販促の時期、ブランドの見せ方。どれもEC部門だけで完結しません。次の章で具体例を書きます。
トラブル対応は、予定を壊してくる種類の仕事です。在庫データの不整合、受注の取り込みミス、モール側の仕様変更、レビューやお問い合わせへの対応。改善の作業を進めていた日に限って起きて、気づけば一日が終わっていることもあります。
EC担当は管理画面の中だけで仕事をしているわけではない
社内調整の大変さは、具体例で見たほうが伝わると思います。私が経験した範囲では、Amazonのセール価格をめぐる調整がその典型でした。
Amazonで売上を伸ばそうとすると、セールやクーポンで価格を動かす場面が出てきます。ところが価格を下げれば、店舗や自社ECとの価格差が生まれます。そうなると、他チャネル側から「なぜAmazonだけ安いのか」という指摘が入ることがあります。Amazonの売上だけを見れば合理的な判断でも、会社全体で見ると調整が必要になる、という状況です。
これはAmazonに限った話でも、必ず揉めるという話でもありません。価格の方針、流通の形、チャネル構成によって、起こりやすさは変わります。ただ、EC担当の仕事が管理画面の中だけで完結しないことは、どの会社でも共通しています。
施策を考えること自体より、その施策を会社の中で通すほうに時間がかかる。この感覚は、ECの大変さの大きな部分だと思います。
それでもECを面白いと思う理由
私がECの仕事を面白いと思ういちばん大きな理由は、自社の商品がお客様に届いて、喜んでもらえることです。
売上やCVR、広告効率はもちろん見ます。ただ、日々の仕事の原動力になっているのは数字そのものではなく、一人でも多くの人にこの商品を知ってもらいたい、試してもらいたいという気持ちのほうです。ページを直して、広告を調整して、そのあとレビューに「買ってよかった」と書かれているのを見ると、やっていてよかったと思います。
だから私は、自分が本当に届けたいと思える商品を持つ会社で働くことを重視しています。商品を好きになれない会社では働くべきではない、とまでは思いません。ただ、やりがいを感じやすくなる要素のひとつではあると感じています。
「EC担当がきつい」は会社によっても変わる
同じEC担当でも、負担の大きさは環境によって変わります。次の5つは、負担が大きくなりやすい状況です。ただし、これは危ない会社の見分け方ではありません。どれも、合う人には合いますし、支援体制があれば問題にならないこともあります。
| 状況 | 負担になりやすい理由 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 一人EC | 担当範囲と責任が一人に集中しやすい | 困ったときに相談できる相手や、外部の支援があるか |
| 業務範囲が広い | 分析や改善以外の作業にも時間を取られる | 自分がどこまでを担当し、どこから外に出せるか |
| 商品に課題がある | EC施策だけでは成果につながらない場合がある | 商品や価格の見直しに、EC側から関われるか |
| 社内のEC理解が少ない | 施策の説明や調整にかかる時間が増えやすい | ECが社内でどう位置づけられているか |
| 代理店の活用が中心 | 自分で考えて実行する機会が少なくなることがある | 社内の担当者は何を判断する役割なのか |
一人ECでも、裁量が大きくて面白いと感じている人はいます。代理店を使うこと自体も問題ではありません。見たいのは、自分が担う範囲と責任、そして使える裁量と支援体制が噛み合っているかどうかです。
業務範囲の広さは、メリットにも負担にもなる
EC担当の仕事は範囲が広いと感じます。商品登録や受注対応から、広告、販促、在庫、分析、社内調整、代理店とのやり取りまで、関わる領域が多い仕事です。
これは経験を広げられるという意味ではメリットです。ECの全体像が早くつかめますし、どこが売上に効くのかの感覚も育ちます。
一方で、定型作業が積み上がってくると、分析したり改善を考えたりする時間が削られます。日々の運営に必要な仕事なので、それ自体に価値がないわけではありません。ただ、気づいたら一日が作業だけで終わっている状態が続いているなら、時間の使い方を見直す余地があります。
ECでは学び続ける場面が多い
モールの仕様も、広告のメニューも、使えるツールも、販促のやり方も変わっていきます。去年うまくいった方法が、今年は同じように効かないこともあります。
そのため、他社の良い事例を見て、自社で使えるかを考えて、試して、結果を見る、という動きが仕事の中に入ってきます。これはECという仕事の性質で、向き不向きの話ではありません。ただ、学ぶ場面が多い仕事であることは知っておくと、心構えが変わると思います。
自分に合っているかどうかを詳しく考えたい場合は、EC担当に向いている人とはのほうが近いテーマを扱っています。
きついと感じたとき、仕事と環境を分けて考える
「きつい」と感じたときに確かめたいのは、それがECという仕事そのものから来ているのか、いまの環境から来ているのか、です。
何がつらいのかを分けてみる
仕事そのものに近いもの
数字を追い続けることがつらい/数字を見ること自体が苦手/ECの業務内容に興味を持てない
いまの環境に近いもの
業務量が多すぎる/一人で抱えている/社内調整に時間を取られすぎる/自分で判断する機会がない/扱う商品に納得できていない
これは診断ではありません。当てはまる数で何かが決まるわけでもありません。ただ、上と下のどちらに寄っているかが分かると、次に動かせるものが見えてきます。
環境のほうに寄っているなら、いまの会社の中で仕事の取り方を変えられないかを先に考える手もあります。担当範囲を変えてもらう、作業を外に出す、判断に関わる機会をもらう。その確かめ方は今の会社で市場価値を上げられるか確認したい5つの条件で整理しています。
そのうえで、環境そのものが合っていないと感じるなら、転職を考えてもいいと思います。私の場合、環境には恵まれているのに「経験が積めない気がする」という理由だけで動こうとしている人には、今の会社で動き方を変えられないかをもう一度考えてみては、と伝えることもあります。辞めたい気持ちの整理の仕方はEC担当を辞めたいと思ったときに整理したいことで扱っています。
EC担当という仕事を続ける価値はあると思う
大変な面を書いてきましたが、私自身はEC担当という仕事には、いまの時点で十分やる価値があると考えています。
理由のひとつは、ECを経験すると「モノをどう売るか」という仕組みを実務として理解できることです。誰に、どう知ってもらい、何を見て買ってもらい、どう続けて買ってもらうか。その流れを数字で確認しながら動かせるのは、ECの仕事の特徴だと思います。
将来、自分で何かを売ることを考えたときにも、この経験は使えると思っています。私自身、店舗を構えることと比べれば、ECは販売を始める選択肢として検討しやすいと感じています。簡単に参入できるとか、低コストで成功できるという意味ではありません。
転職市場についても、ECの実務経験は活かせる場面が多いと私は感じています。これは私の実感であって、データで裏づけた話ではありません。EC市場そのものの今後や、AIによって仕事の進め方がどう変わるかは、EC業界に将来性はある?で経済産業省のデータを確認しながら整理しています。
「ECがきつい」のか「今の環境がきつい」のか
最後に、考えてみてほしいことを並べます。いま自分がいちばんつらいと感じているのは何か。それはECという仕事そのものから来ているのか、いまの会社に特有のものか。仕事の取り方を変えれば減らせるものか。それとも環境を変えたほうがいいものか。
EC担当には大変な場面があります。それでも、自分が届けたいと思える商品を、どう届けるかを考えて、実際に届いた結果まで見られること。それが、私がこの仕事を面白いと思う大きな理由です。
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