EC業界の仕組みとは?メーカー・モール・支援会社の役割分担を解説

ECの売上は、メーカー1社だけで作られているわけではありません。モールに出店し、広告の運用を代理店に任せ、物流を外部に委託する。そうやって複数の会社が関わりながら動いています。

私はメーカー側とECプラットフォーム側の両方で働いたことがあります。そこで分かったのは、同じ施策でも、立場が変わると見え方がまったく違うということでした。メーカーにいたときに受け取っていた提案の背景を、プラットフォーム側に移ってから理解した、ということが何度もあります。

この記事では、メーカーを中心に、プラットフォームや代理店・支援会社がどう役割を分けてECの売上を作っているのかを整理します。どこで働くかによって仕事の中身がどう違うかはEC業界とは?で扱っているので、ここでは関係のほうに絞ります。


この記事でわかること

  • ECがメーカー単独では動かない理由
  • メーカーとプラットフォームが何をやり取りしているのか
  • メーカーと代理店・支援会社の役割の分け方
  • 立場によって提案の内容が変わる理由
  • メーカー側が自分で持っておきたい判断

ECはメーカーだけでは動かない

商品を持っているのはメーカーです。ただ、商品があるだけでは売れません。人に見つけてもらう場所が必要で、買ってもらうための売場があり、決済や配送の仕組みも要ります。広告の運用やページの改善も、片手間でできる量ではないことが多いです。

だからメーカーは、外部と組みます。関係を単純にすると、大きく次の2つです。

  • メーカー ⇄ ECプラットフォーム・モール(売場と集客を借りる関係)
  • メーカー ⇄ 代理店・EC支援会社(実行や専門性を借りる関係)

そしてこの外側に、商品を買う顧客がいます。実際には物流会社やシステム会社も関わりますし、契約の形やモールによって条件はかなり違います。ここで示すのは、関係を把握するための大きな枠であって、厳密な商流図ではありません。


メーカーとプラットフォームは何をやり取りしているのか

メーカー → プラットフォームプラットフォーム → メーカー
商品を出品・出店する集客(自社では届かない人に見てもらえる)
販売手数料を支払う売場(買える状態を用意してくれる)
広告費を投下する顧客との接点、ブランドを知ってもらう接点
セールや販促企画に参加する販売データ、販促の機会

メーカー側にいたときに、私がプラットフォームの価値として大きいと感じていたのは集客とブランドの接点です。単に「商品を置かせてもらう場所」ではありません。自社のサイトだけでは出会えない人に商品が表示され、買う予定がなかった人にもブランドを知ってもらえる。この接点は、自社単独で作るとかなりの時間とお金がかかります。

一方で、プラットフォームにも当然、事業としての目的があります。私がプラットフォーム側で100社以上のメーカーを支援していたとき、期待されていたのは担当企業の売上を伸ばすことでした。そしてそのためには、広告費を投下してもらう必要がある場面もあります。実際、広告予算をどこまで出してもらえるかの調整は、仕事の中で重要な部分でした。

これは、メーカーの売上とプラットフォームの目的が対立しているという話ではありません。売れれば両者とも伸びます。ただ、完全に同じものを見ているわけでもない、ということです。


メーカーと代理店・支援会社はどう役割を分けるのか

メーカー → 代理店・支援会社代理店・支援会社 → メーカー
委託費を支払うデータの分析
広告予算を預ける改善の提案
商品情報を共有するその領域の専門知識
事業としての目標を伝える広告運用やページ改善の実行
実施するかどうかを判断する施策の実行と報告

この関係を私はこう整理しています。

  • メーカー=分析+判断
  • 代理店・支援会社=分析+実行

どちらも分析はします。専門性で言えば、広告運用の細かいところは支援会社のほうが詳しいことがほとんどです。違いが出るのは最後です。何を優先するか、どこまで予算を使うか、何を実施して何を見送るか。決めるのはメーカー側になります。

実行を任せること自体は、何も問題ありません。手が足りない領域を専門の会社に任せるのは合理的な選択です。気をつけたいのは、実行と一緒に判断まで預けてしまうことです。この線引きはメーカーECはなぜ代理店依存になる?で詳しく扱っています。


なぜ立場によって提案の内容が変わるのか

提案を受けたときに「なぜこの提案が出てきたんだろう」と思ったことはないでしょうか。多くの場合、その背景には相手側の目的があります。

たとえばプラットフォームには、売場全体の流通額を伸ばしたい、広告の事業を伸ばしたい、という目的があります。だから広告への投資を提案する場面が出てきます。代理店や支援会社には、成果を出して契約を続けたい、運用しやすい形で任せてほしい、という事情があります。

ここで強調しておきたいのは、だから提案が悪い、という話ではないということです。相手の目的と自社の目的が重なっている提案はたくさんありますし、プロの視点から出てくるものには自社だけでは気づけない内容も含まれます。

必要なのは、受け取る側が相手の立場と目的を理解したうえで、自社として実施すべきかを判断することです。相手に悪意がなくても、提案は相手の見えている範囲から出てきます。自社の在庫や利益、他のチャネルの状況まで含めて見られるのは、メーカー側だけです。


メーカー側が持っておきたい判断

提案を判断するために、メーカー側が持っておきたいものは、そう多くありません。

  • 何を優先するのか(新規を取りにいくのか、利益を守るのか)
  • どこまで予算を使えるのか
  • 実施するのか、見送るのか
  • 見送るなら、代わりに何をするのか

これを持っていれば、提案が来たときに「自社の目的に合っているか」で判断できます。逆にここが曖昧だと、提案の内容が良さそうに見えるかどうかだけで決めることになり、毎回の判断が相手任せになります。

なお、成果が出たときに「それが相手の働きによるものか」を切り分けるのは、思っているより難しい作業です。その難しさはEC代理店の評価はなぜ難しい?で、実際にどんな基準で継続・変更を判断するかはEC広告代理店の評価方法で扱っています。


「発注する側・される側」ではなく、一緒に成長する

ここまで「決めるのはメーカー側」と書いてきました。これは、メーカーが偉いとか、発注者だから上だという意味ではありません。商品を持ち、予算を持ち、事業としての責任を負っている以上、意思決定の中心になるのが自然だ、という話です。

私が実務で最も大事だと思っているのは、一緒に成長していくスタンスです。「お金を払っているのだから言うとおりにしてほしい」という関係からは、良い提案は出てきません。相手が持っている知識と専門性を使わせてもらいながら、同じ売上の成長を目指す。そのほうが、結果的に早いです。

ただし、これは仲良くやりましょうという話ではありません。一緒に成長するには、両方がやることがあります。

メーカー側がやることプラットフォーム・支援会社側がやること
数字を自分でも見るメーカーの事情を理解する
自社の事情を説明する専門知識を提供する
予算を判断するデータを分析する
提案の意図を理解する改善を提案する
実施する・しないを決める実行を支援する
結果を共有する結果を共有する

どちらか一方だけが頑張っても、この関係は成り立ちません。メーカー側が数字を見ないまま任せきりになれば、相手は提案の精度を上げようがありません。逆に、こちらが事情を説明しないまま「もっと良い提案を」と言っても、相手は手探りになります。

この関わり方を続けていると、メーカーEC担当としての力も伸びます。外部と組みながら成果を出した経験がどう評価されるかはEC担当の代理店管理スキルとは?で扱っています。


まとめ

この記事のまとめ

  • ECはメーカー単独では動かず、プラットフォームや支援会社と役割を分けて成り立っている
  • プラットフォームの価値は集客とブランドの接点。一方で相手にも事業上の目的がある
  • メーカーは分析と判断、代理店・支援会社は分析と実行を担う
  • 提案の背景には相手の目的があるので、理解したうえで自社として判断する
  • 目指すのは発注する側・される側の関係ではなく、役割を持ち寄って売上を伸ばす関係

EC業界には立場の違う会社が関わっていて、それぞれに目的があります。目的が違うこと自体は悪いことではありません。知らないまま付き合うと、提案をそのまま受け取るか、必要以上に疑うかのどちらかになってしまいます。

相手が何を担い、何を期待しているのかが分かると、提案の見え方が変わります。そのうえで自社として決められるようになると、外部と組むことの価値が大きくなります。


メーカーECの全体像を順番に学びたい方は、はじめてのメーカーEC講座もご覧ください。

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