EC業界とは?働く場所で変わる仕事内容と身につくスキルを解説

私がEC業界に入ったのは約10年前、営業職としてでした。当時は「最先端のところで働いている」という感覚が少しあったのを覚えています。実際に働いてみると、思っていたよりも地味で、会社によってやることがまるで違う世界でした。

EC業界を調べると、職種の一覧や市場規模の説明はたくさん出てきます。ただ、これからこの業界で働こうとしている人にとって本当に知りたいのは、どこで働くと、どんな仕事をして、どんな力がつくのかだと思います。

この記事では、EC業界の全体像を、働く場所という切り口で整理します。そのうえで、会社によって売上の作り方が違うこと、それでも共通して使える考え方があることまで説明します。


この記事でわかること

  • EC業界とは何か、どのくらいの規模なのか
  • ECに関わる働く場所は大きく3つに分けられること
  • 場所によって仕事の中身と、身につきやすい力が違うこと
  • 会社ごとに売上の作り方が違う一方、共通して使える考え方があること
  • EC業界で働くことを考えるときに、求人のどこを見るか

EC業界とは何か

ECは「Electronic Commerce(電子商取引)」の略で、インターネットを通じて商品やサービスを売買する取引のことです。EC業界という言葉は、その取引に関わる企業全体を指して使われます。Amazonや楽天市場のようなモール、メーカーが自社で運営するECサイト、それを支える会社まで含まれます。

規模感も押さえておきます。経済産業省の調査によると、2024年の日本国内のBtoC-EC市場規模は26.1兆円、物販系分野のEC化率は9.8%でした(経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」2025年8月26日公表)。EC化率は金額ベースの割合なので、2024年の物販系分野では、取引金額のうち9.8%がECを通じたものだった、という意味になります。

つまり、金額で見ると、取引の大半はまだ店舗などEC以外の経路で行われています。伸びしろがある一方で、ECだけで事業が完結している会社はそれほど多くありません。市場の推移や今後の見通しについてはEC業界に将来性はある?で詳しく扱っています。


ECの仕事は「どこで働くか」で変わる

EC業界で働くといっても、仕事の中身は会社の立場によって大きく違います。大きく分けると、働く場所は次の3つです。

  • メーカー・事業会社(商品を持ち、自分たちで売る側)
  • ECプラットフォーム・モール(売る場所を提供する側)
  • 代理店・EC支援会社(外から実行や改善を支援する側)

この3つですべてのEC企業をきれいに分けられるわけではありません。物流会社やシステム会社も業界の一部ですし、両方の顔を持つ会社もあります。ここでは、業界を最初に把握するための大きな分け方として使います。

そして、EC担当者やマーケターといった人の役割は、この3つのどこかに所属して仕事をします。職種は場所と並ぶものではなく、場所の中にあるものと考えると整理しやすくなります。

私はこのうちメーカー側とプラットフォーム側の両方で働いた経験があります。その経験から感じた違いを、先に表で示します。あくまで私が見てきた範囲の話で、会社や役割、ポジションによって変わります。

働く場所何を担うか伸びやすいと感じた力
メーカー・事業会社自社商品をECでどう売るかを決めて、社内外を動かす全体を前に進めるマネジメント
ECプラットフォーム・モール出店企業を支援し、売場全体の成長を見る複数社を横断して見る分析
代理店・EC支援会社依頼を受けて改善提案から実行までを担う分析と実行の両方

メーカー・事業会社

商品を持っている側です。ECの担当者は、商品、売上、利益、在庫、広告、代理店、社内の関係部署といったものを横断しながら、EC全体を前に進めていきます。

自分で手を動かす作業もありますが、それ以上に「誰に何を頼んで、どう進めるか」を決める場面が多くなります。そのため、ひとつの専門性を深く掘るというより、全体を動かすマネジメントの力が求められやすいと感じました。商品企画や営業など、EC以外の部署と話す機会も多い場所です。メーカーのECがどういうものかはメーカーECとは?で詳しく扱っています。

ECプラットフォーム・モール

売る場所を提供する側です。出店している企業を支援する立場なので、一度に何十社、何百社という単位で数字を見ます。

私はここで100社以上のメーカーを見る経験をしました。複数社を並べて、数字を見て、課題を比較して、共通点を探し、その会社ならではの違いを見る。この繰り返しなので、分析の力が鍛えられやすい場所だと思います。一方で、自分が担当する商品を持っているわけではないので、売上を自分の判断で作る感覚は得にくい面もあります。

代理店・EC支援会社

外から支援する側です。広告運用、モール運営の代行、ページ改善、コンサルティングなど、何を担うかは会社によってかなり違います。

共通しているのは、分析して改善提案を出し、そのまま実行まで関わるケースが多いことです。分析から実行までが1つの仕事としてつながっているぶん、手を動かす経験は積みやすい場所です。ただし、広告だけ、制作だけ、と範囲が絞られている会社もあるので、ここは求人ごとに確認したほうが確実です。


同じECでも、会社によって売上の作り方が違う

メーカー側にいた頃の私は、プラットフォーム側から出てくる提案は正しいものだと思っていました。自分の中に判断の基準がなかったので、提案されたものをそのまま受け取るしかなかったからです。

その後、支援する側に移って多くの会社を見るようになって、見え方が変わりました。

  • 多くの会社に共通して起きている課題がある
  • その会社だけに起きている課題もある
  • 施策をどれだけ打っても、どうにもならない課題もある

商品の強さ、価格、在庫、ブランドの方針、扱えるチャネル、競合の状況、広告に使える予算、社内の事情。これらが違えば、同じ施策をやっても結果は変わります。ECには共通する考え方はあるけれど、すべての会社に同じ正解を当てはめることはできないというのが、多くの会社を見て感じたことでした。

これは、これからEC業界で働く人にとっても関係のある話です。ある会社でうまくいったやり方が、次の会社でそのまま通用するとは限りません。


それでも、共通して使える大きな枠はある

会社ごとに正解が違うと書きましたが、どこでも使える枠はあります。私が今でも最初に置くのは、次の考え方です。

売上 = 訪問者数 × CVR(購入率) × 客単価

ECの施策は、最終的にこのどれかにつながります。広告を出すのは訪問者数を増やすため。商品ページを直すのはCVRを上げるため。まとめ買いを促すのは客単価を上げるため。新しい施策を聞いたときも、「これはどこを動かす話なのか」と考えると迷いにくくなります。

ただし、どのレバーを動かせるかは会社によって違います。在庫が限られていれば訪問者数を増やしても売り切れますし、ブランドの方針で値引きができなければ客単価の下げ方は選べません。枠は共通でも、打てる手は環境で決まります。

だから、この枠を覚えること自体がゴールではありません。枠を使って、いまの会社では何が動かせて何が動かせないのかを見分けられるようになることが、実務で効いてきます。


EC業界で働くことを考えるときに見るもの

未経験からEC業界に入るのは、簡単ではないと思っています。企業側が育てる前提で採用する必要があるからです。ただ、実行する部分から担当できるメーカーなどであれば、可能性はあります。

ここで気をつけたいのは、求人票に「EC担当」と書かれているだけで判断しないことです。同じ呼び名でも、中身がまったく違います。

私が確認したほうがいいと考えているのは、ECに関わる雑務だけで終わらないかという点です。請求処理、売上の計上、物流の手配。どれも必要な仕事ですが、これだけを続けてもECのスキルは伸びにくいです。

キャリアとしてECの力を伸ばしたいなら、売上をつくる側の仕事にどこまで関われるかを見ておきたいところです。

  • 販促の企画
  • 広告
  • 商品ページの改善
  • CVRの改善
  • 集客
  • CRM(既存のお客さまとの関係づくり)
  • 数字の分析

ざっくり言えば、その仕事でWEBマーケティングの力を伸ばせるかどうかです。求人票のどこを読めばそれが分かるかは、EC担当の求人票はどこを見る?で具体的に整理しています。

すでにEC担当として働いている人であれば、いまの仕事内容そのものが判断材料になります。日々の業務の中身はメーカーEC担当の仕事内容で、その先にどんな道があるかはEC担当のキャリアマップで扱っています。


私が「どこで働きたいか」を決められるようになった話

最後に、自分の話を少しだけ書きます。

多くの会社を横断して見るようになってから、私は自分なりの基準を持つようになりました。商品に強さがあること、施策をある程度の数打てること、投資する余力があること。こういう環境で働きたい、と考えるようになりました。

これは「そういう会社を選ぶべきだ」という話ではありません。何を面白いと感じるかは人によって違いますし、制約の多い環境で工夫するほうが力がつくという考え方もあります。ただ、いろいろな会社を見たことで、自分が何を基準に選びたいのかが言葉になったのは確かです。

EC業界に入る前の自分に一つだけ伝えるとしたら、「会社ごとに売上の作り方は違うから、最初の会社の正解を全部だと思わないほうがいい」ということだと思います。


まとめ

この記事のまとめ

  • ECはインターネット上の取引のことで、2024年のBtoC-EC市場は26.1兆円、物販系分野のEC化率は金額ベースで9.8%
  • 働く場所は大きく、メーカー・事業会社/ECプラットフォーム・モール/代理店・EC支援会社の3つ
  • 場所によって仕事の中身が違い、伸びやすい力も変わる
  • 会社ごとに売上の作り方が違うので、どこかの正解がそのまま通用するとは限らない
  • 一方で「売上=訪問者数×CVR×客単価」という枠はどこでも使える

EC業界は一つの仕事の集まりではなく、立場の違う会社が組み合わさって動いています。だから、自分がどこで働くかによって、できることも身につくことも変わります。

これから入る人も、すでに働いている人も、まずは「いま自分はどの立場にいて、どこまで関わっているのか」を見てみてください。そこが分かると、次に何を経験したいかも考えやすくなります。

この講座では、ここから順番にメーカーECの仕事を見ていきます。まずは、それぞれの会社がどう関わり合ってECが動いているのかを、次のページで確認してみてください。


はじめてのメーカーEC講座|STEP 1
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次に読む:
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自分の現在地を整理したい方へ

いまどの立場で、どこまでECに関わっているのかを整理しておくと、次に取りたい経験も決めやすくなります。EC担当のキャリア現在地診断もご活用ください。所要時間は約3分です。