EC担当の求人票の読み方|担当範囲・代理店・雑務から「実際の仕事」を見極める

この記事でわかること

  • EC求人の「業務名」から、実際の仕事を読み解く見方
  • 同じ「広告運用」でも中身が変わる理由
  • 代理店の有無をどう受け止めるか
  • 売上計上や販促費処理といった周辺業務の扱い
  • 求人票だけでは分からないことをどう整理して面接へ持っていくか

EC担当の求人票を見ていると、書かれている業務内容はどこも似て見えることがあります。「ECサイト運営全般」「売上拡大」「広告運用」「幅広くお任せします」。読めば何をするかは分かるのに、入社後に自分が実際に何をしているのかは、あまり想像がつきません。

この記事で扱うのは、良いEC求人と悪いEC求人を見分ける方法ではありません。この求人に入ったら、自分は何に時間を使うことになるのかを、求人票から考えるための見方です。

目次

EC求人は、業務名だけでは実際の仕事が分からない

EC求人の募集要項には、だいたい業務名が並びます。商品ページの運用、広告運用、販促企画、在庫管理、売上管理、代理店対応。どれも間違いではありません。ただ、業務名は「その仕事が存在する」ことしか示していません。

同じ業務名でも、自分が手を動かすのか、誰かが動かしたものを見るのか、そもそも判断だけをするのかで、日々の仕事はまったく違うものになります。EC担当の求人票を読むときにまず必要なのは、業務名の一覧を確認することではなく、その業務の中で自分が何をするのかを考えることです。

まず見るのは「何を担当するか」より「誰が何をするか」

広告運用は自分でやるのか、代理店を管理するのか

個人的に、EC求人で最も分かりにくいと感じるのがここです。「広告運用」と書かれていても、次のどちらなのかが求人票だけでは判断できないことがあります。

A:自社で実運用するB:代理店の運用を管理する
日々やること管理画面の操作、入札調整、予算配分、広告入稿、クリエイティブ差し替え数値の確認、課題の共有、方針の決定、予算管理、代理店へのディレクション
身につくもの媒体ごとの運用スキル、細かい改善の手数数字から課題を見つける力、外部を動かして成果を出す力
時間の使われ方運用作業の比率が高くなりやすい分析と調整の比率が高くなりやすい

どちらが上ということではありません。ただ、同じ「広告運用経験」として転職市場に出ていくときも、AとBでは説明できる内容がかなり変わります。この違いについては職務経歴書で担当範囲と裁量をどう書くかでも触れています。

「EC運営全般」の中身を分解する

業務名を読むときは、次の5つに分けて考えると輪郭が出ます。

視点確認したいこと
A 何を担当するかチャネル、商品、EC売上規模、チーム人数、上司は誰か、EC責任者がいるか
B 何を自分で判断できるか施策の実行可否、広告予算の配分、値引きやポイントの設定、代理店の選定
C 誰が手を動かすか広告、商品ページ制作、バナー、在庫の実務、問い合わせ対応、代理店の有無と役割分担
D 何に時間を使う仕事か運用作業、社内調整、事務処理、分析と施策設計の比率
E その環境で何が身につくかDの比率の結果として、1年後に何を語れるようになっているか

求人票に書いてあるのは、多くの場合Aだけです。BとCは書かれていないことのほうが多く、Dはほぼ書かれていません。そしてEは、DとCの結果として後から決まります。

代理店がいるかどうかで、EC担当の仕事は変わる

私がいまEC求人を見るなら、かなり気にするのが代理店の有無です。EC業務を全部ひとりでやるのは、正直かなりきついという実感があるためです。

役割分担がうまくいっている状態の一例を挙げると、こうなります。

役割分担の一例

代理店:実際に手を動かす/運用する/打ち手を提案する
社内のEC担当:EC全体を管理する/数字を分析する/課題を考える/施策の方向性を決める/代理店を管理する/実行管理をする/関係部署と調整する

ただし、これは「代理店がいる会社のほうが良い」という話ではありません。

手を動かす経験を積みたい場合

広告運用を自分のスキルとして身につけたい、媒体の細かい挙動まで理解したい。そう考えているなら、インハウスで手を動かせる環境のほうが合っている可能性があります。代理店に任せている会社では、その経験は積みにくくなります。

全体管理・分析・施策設計を伸ばしたい場合

逆に、EC全体を見て数字から課題を見つけ、施策の方向性を決める側に進みたいなら、実運用を外に出せている環境のほうが時間を使えます。代理店の提案をそのまま実行するのではなく、評価して優先順位を決める経験は、意外と市場で説明しやすい経験でもあります。この点は代理店管理がなぜ評価されにくいのかで詳しく扱っています。

つまり重要なのは代理店がいるかどうかそのものではなく、自分が次に何を身につけたいかと、その会社の役割分担が合っているかです。

意外と確認しておきたいのが「雑務を誰がするか」

売上計上・販促費処理・契約が積み重なる

求人票にはまず書かれませんが、EC担当の時間をかなり使うのが周辺業務です。売上計上、販促費の処理、契約関連の対応、その他の事務処理。ひとつずつは大きくなくても、積み重なるとEC担当の業務をかなり圧迫します。

理想を言えば、経理処理は経理部、法務関連は法務部、実運用は必要に応じて代理店、EC担当は全体統括と分析、施策設計、実行管理という分担です。ただ、この形になっている会社ばかりではありません。

雑務があるから悪い会社、ではない

POINT

会社員である以上、一定の事務作業や周辺業務は必ず発生します。雑務があることだけを理由に、良い求人を候補から外してしまうのは非常にもったいないと思います。

確認したいのは、雑務がゼロかどうかではありません。自分が本当にやりたい仕事や伸ばしたいスキルに使える時間が、どのくらい残るかです。雑務ゼロの求人を探すのではなく、自分にとって許容できる業務配分なのかを見る、という考え方のほうが現実的です。

EC業務は範囲が広く、商品登録、広告、販促設定、クリエイティブ、在庫確認、問い合わせ対応、売上計上、請求処理、契約、代理店管理、分析、施策立案、社内調整と並びます。これを全部ひとりで抱えると、本来いちばん時間を使いたい「分析して、課題を見つけて、施策を設計して、実行を管理して、振り返る」に手が回らなくなることがあります。

ただし、小規模ECや立ち上げフェーズでは、ひとりで幅広く経験すること自体が価値になる場合もあります。ここも一律には決められません。

「幅広くお任せします」は面接で中身を確認する

「幅広くお任せします」という表現は、危険なサインとして語られることがあります。ただ、求人票のその一文だけで判断できることはほとんどありません。

「幅広い」の中身起こりうること
裁量が広い施策の判断まで任され、EC全体を見る経験が積める
担当業務が多い広告・商品登録・バナー制作・在庫・売上計上・契約処理まで抱える

どちらもあり得ますし、両方が同時に起きていることもあります。求人票の段階でできるのは、この一文に「幅広い、の中身を聞く」という印をつけておくことだけです。断定するのではなく、確認する対象として持っておきます。

EC担当なら「この商品を自分で売れるか」も考えてみる

もうひとつ、EC担当ならではの見方があります。求人票を見たときに、この商品を自分ならどう売るだろうかと考えてみることです。

EC担当の成果は、本人のスキルだけでは決まりません。商品そのもの、ブランド力、市場の状況、価格、競合、在庫の状況、粗利率、リピート性。こうした要素に大きく左右されます。同じ施策を打っても、商材が変われば結果は変わります。

だから、会社名や提示年収だけでなく、扱う商品を見て、売り方を具体的に想像できるかどうかも判断材料になります。想像してみて何も浮かばないなら、それ自体が情報です。

ただし、商品力の強い会社を選ぶべきという話ではありません。商品力が弱い状態から改善していく経験を積みたい人もいます。その場合は、むしろ課題が多い環境のほうが得るものは大きくなります。なお、担当範囲や事業環境が年収にどう影響するかはEC担当の年収は会社選びで決まるのかで整理しています。

架空の求人票を分解してみる

説明のために作った架空の求人票で、実際に分解してみます。実在する企業の募集ではありません。

架空の求人票(例)

【仕事内容】ECサイト運営全般を担当していただきます。広告運用、販促企画、売上管理、代理店対応など、幅広くお任せします。

これを「幅広い経験ができそう」で終わらせず、次のように分けてみます。

書かれている言葉確認したいこと
広告運用管理画面を自分で触るのか、代理店の運用を管理するのか。予算は誰が決めるのか
販促企画企画を立案するのか、決まったものを実行するのか。値引きやポイントの判断は誰がするのか
売上管理数字を見る仕事なのか、売上計上の事務処理まで含むのか
代理店対応何を任せていて、何を社内で持っているのか。対応とは窓口業務か、方針を決める側か
幅広くお任せ商品登録やバナー制作、契約処理まで入るのか。EC担当は何人いるのか
(書かれていないこと)分析と施策設計に、週のうちどのくらい時間を使えそうか

ここまで分解すると、求人票が「情報」から「確認すべき項目のリスト」に変わります。これが求人票の使い方だと考えています。

求人票を自分のキャリアと照らして読む

ここまで見てきたとおり、同じ求人でも評価は人によって変わります。すべての人にとって良いEC求人、というものは定義できません。

次に伸ばしたいもの合いやすい環境
広告運用のスキルインハウスで媒体を自分で触れる会社
分析・施策設計・全体管理実運用を代理店に出し、判断と設計を社内で持っている会社
立ち上げの経験業務範囲が広く、ゼロから作る場面がある会社
EC責任者としての経験売上だけでなく利益・予算・在庫・組織まで見られる会社

責任者側に進む場合に何が変わるのかはEC責任者とEC担当者の違いで、EC担当としてどのスキルを次に積むかという視点はEC担当者に必要なスキルを4段階で整理した記事で扱っています。

次に何を身につけたいかで、良い求人は変わる

逆に言えば、自分が次に何を伸ばしたいのかが曖昧なままだと、求人票を読んでも何を重視すればいいのかが決まりません。広告運用を深めたいのか、分析と施策設計を伸ばしたいのか、EC全体を統括する側へ進みたいのか。ここが決まっていないと、条件面だけで比べることになりがちです。

自分の現在地を整理したい方へ

いまどこまでを任されていて、次にどんな経験を積むと伸びやすいのか。求人票を読む前の整理として、EC担当のキャリア現在地診断もご活用ください。所要時間は約3分です。

求人票だけでは分からないことは面接で確認する

ここまで挙げてきたことの多くは、求人票を読むだけでは確定できません。実際の業務割合、代理店との役割分担、周辺業務の量、意思決定の範囲、上司との役割分担、分析に使える時間。どれも書かれていないほうが普通です。

そのため、求人票の役割は判定ではなく仮説を作ることだと考えたほうが実態に合います。

求人票の使い方

求人票を読む → 「この会社ではこういう働き方になりそうだ」という仮説を立てる → その仮説が合っているかを面接で確認する

求人票で立てた仮説を面接でどう確かめるかは、EC担当の転職面接で確認したいことで整理しています。メーカーECに絞った考え方は、メーカーECへの転職を検討するときの考え方でも触れています。

求人票を見る前に、自分の担当範囲と裁量を整理する

最後に、順番の話をします。

求人票から次の会社で任されることを読み解くには、比較の基準が必要です。その基準になるのは、自分がこれまで何を任され、どこまで自分で決めていたのかという事実です。ここが整理できていないと、求人票を読んでも「自分にとって広い範囲なのか、狭い範囲なのか」が判断できません。

自分の担当範囲と裁量をどう言語化するかは、EC担当者の職務経歴書の書き方で扱っています。順番としては、先に自分の経験を整理してから求人票を見るほうが、比較がしやすくなります。

求人票は、採点するための書類ではありません。入社後の自分が何に時間を使うことになるのかを想像し、それが自分の伸ばしたい方向と合っているかを確かめるための材料です。そう考えると、読むときに見るところも変わってきます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

EC Career Lab運営者

EC領域で約10年。メーカーEC、ECモール企業でのメーカー支援(100社以上)を経て、現在はメーカー側で複数モールを統括し、月商1〜2億円規模のEC事業を運用しています。

メーカーECの実務とキャリアについて、現場での経験をもとに発信しています。

コメント

コメントする

目次