この記事でわかること
- 今の会社で市場価値につながる経験を積めているかを確認する5つの条件
- 指示された仕事でも、経験の取り方次第で市場価値につながる理由
- 失敗した施策を「検証した経験」に変えるPDCAの回し方
- 欲しい経験がないとき、社内で取りにいく方法と、転職を考えるべきケース
- 「スキルアップしたい」という転職理由を問い直す視点
「この会社にいても成長できない気がする」。EC担当として働いていると、そう感じる時期があるかもしれません。
この記事は、転職したほうがいいのか、今の会社に残ったほうがいいのかを決める記事ではありません。考えたいのは、今の会社にいることで、次のキャリアにつながる経験を積めているかです。
「転職しないと市場価値は上がらない」は本当か
私が「この会社にいても成長しにくいかもしれない」と感じる典型は、指示された作業だけを続けている状態です。言われたことをこなし、終わったら次の作業に移る。その繰り返しだと、年数は増えても経験が深まりにくくなります。
ただし、ここで強調したいのは、指示された作業だから市場価値が上がらない、というわけではないということです。上司から指示された施策でも、市場価値につながる経験は作れます。違いを生むのは仕事の種類ではなく、その仕事から何を持ち帰っているかです。
市場価値がどんな要素で評価されるかはEC担当の市場価値とは何かで、どう積み上げるかはEC担当の市場価値を高める5つの行動で整理しています。この記事では一歩手前の、「今の会社で、それにつながる経験が積めるか」を確認します。
今の会社で市場価値を上げられるか確認したい5つの条件
私が今の会社に残る価値を考えるときに見るのは、自分が伸ばしたいスキルを伸ばせるか、まだ学びが多いか、会社から評価されているか、です。これをもとに、確認したい条件を5つに分けました。
| 条件 | 自分に問いかけること |
|---|---|
| ① 伸ばしたいスキル | 今の仕事で、何を身につけたいのか。それは今の仕事で伸ばせるか |
| ② 学び | 半年前より、自分で判断できることは増えたか |
| ③ 実績と再現性 | 成功・失敗の理由を、自分の言葉で説明できるか |
| ④ 担当範囲 | 自分から仕事を広げる余地はあるか |
| ⑤ 評価 | 経験・成果・役割が、会社で評価されているか |
当てはまる数を数えて、残るか辞めるかを決めるための表ではありません。どこが満たされていて、どこが足りないのかを見るための材料です。
① 伸ばしたいスキルを伸ばせるか
最初に必要なのは、自分が何を伸ばしたいのかがはっきりしていることです。広告の運用を深めたいのか、数字から課題を見つける力をつけたいのか、複数モールを横断して見たいのか。伸ばしたいものが決まっていないと、今の会社で伸ばせるかどうかも判断できません。
② まだ学びがあるか
新しいツールを覚えた、新しい広告メニューを触った、というだけでは「学び」とは言いにくいところがあります。確認したいのは、理解が深まっているかどうかです。
なぜこの商品は売れたのか。なぜ売れなかったのか。なぜこの商品に力を入れるのか。なぜこのモールなのか。なぜこの広告予算なのか。なぜこのKPIを追うのか。こうした「なぜ」に答えられることが増えているなら、学びは続いています。
経験年数が増えることと、経験が深くなることは別です。3年目と5年目で、判断できることが変わっていないなら、年数だけが増えている状態かもしれません。
転職の場面で経験年数がどう見られるかは、EC担当は何年経験すれば転職できるかで詳しく整理しています。
③ 実績と再現性を作れるか
市場価値を考えるうえで、実績を作ることは重要です。ただ、実績だけでは足りません。大事なのは再現性です。
「売上が前年比120%になった」だけでなく、なぜ伸びたのか、何を変えたのか、外部要因は何だったのか、別の商品や別のモールでも使える考え方なのか。ここまで説明できると、次の会社でも同じように考えられる人だと伝わります。今の会社で、こうした振り返りができる機会があるかどうかを見てください。
④ 担当範囲を広げられるか
今の担当範囲が狭くても、広げる余地があるなら、経験は変えられます。別のモールを担当する、月次の数字を見る、施策を提案する。自分から手を挙げたときに、受け入れてもらえる環境かどうかです。この点は、後半の「社内で取りにいく」で詳しく書きます。
⑤ 経験や成果が評価されているか
評価は軽く見ないほうがいい条件です。成長できる環境であっても、成果や役割がまったく評価されない状態が長く続くなら、それはキャリアを考え直す理由になり得ます。
ただ、「評価されていない」と感じたらすぐ転職、ではありません。まずは会社の評価制度がどうなっているか、上司が自分の仕事をどう見ているか、自分に求められている役割は何か、昇格の条件は何かを確認してみてください。評価されていないのではなく、評価される軸と自分が頑張っている軸がずれているだけ、ということもあります。
指示された仕事だけでも経験は作れる
「やった」で終わると経験は浅い
たとえば、上司から「楽天の広告を、この商品に出して」と言われたとします。
広告を設定して、終わり。これだと、経験としては浅いままです。一方で、同じ仕事でも次のところまで振り返ると、経験の意味が変わります。
なぜこの商品だったのか。どの数字を改善しようとしていたのか。結果はどうだったか。成功したのか、失敗したのか。なぜその結果になったのか。次は何を変えるのか。
指示の意図が分からなければ、上司に聞いてみるのもひとつの方法です。「この商品を選んだ理由を教えてもらえますか」と聞くだけで、判断の材料がひとつ増えます。
| 経験の取り方 | やっていること | 残るもの |
|---|---|---|
| レベル1 | 指示された施策を実行する | 作業ができる、という経験 |
| レベル2 | 結果を振り返る | 何が起きたかを説明できる |
| レベル3 | 成功・失敗の要因を分析し、次の施策に反映する | なぜそうなったかを説明でき、次に活かせる |
同じ「指示された広告運用」でも、どのレベルまで経験を取りにいくかで、市場価値につながる学びは大きく変わります。
成功と失敗を振り返る
振り返りというと、うまくいった施策を思い浮かべがちです。でも、失敗した施策も同じくらい価値があります。
広告を出したのに売上が伸びなかった。そこで「失敗した」で終わらせず、なぜ伸びなかったのかを考える。クリックはされたのに買われなかったのなら、商品ページに原因があるかもしれません。そもそもクリックされなかったなら、広告の出し方や商品の選び方に原因があるかもしれません。こうして原因の仮説を立てること自体が、次に活きる経験になります。
PDCAを回すことで再現性につながる
失敗を「検証した経験」に変える流れ
- 施策を実行する
- 結果を見る
- うまくいかなかった
- 原因の仮説を立てる
- 改善する
- もう一度実行する
- 結果を比べる
ここまで回せれば、その経験は「失敗した」ではなく、「何が失敗の要因だったのかを検証した経験」になります。転職の場面でも、成功事例より、失敗をどう検証して次につなげたかのほうが、考え方の再現性が伝わることがあります。
欲しい経験がないなら、まず社内で取りにいく
5つの条件を見て、今の環境では欲しい経験が積めないと感じたとします。そのときも、いきなり転職だけを考える必要はありません。私ならまず社内で「これをやってみたい」とお願いします。そして、できることなら自分でやってみます。
たとえば、こんなことです。
社内で取りにいける経験の例
- 別のモールも担当させてもらう
- 広告の設定だけでなく、分析まで担当する
- 指示を待たずに、施策を提案してみる
- 月次の数字を見せてもらう
- 代理店との定例に参加する
- 商品企画の会議に入れてもらう
会社に制度として用意されていなくても、自分から担当範囲を取りにいくことで、経験が変わることがあります。断られることもあると思いますが、頼んでみるまで分からないことも多いものです。
それでも会社を変えたいなら転職を考える
一方で、本当に変えたいものが仕事の中身ではない場合もあります。人間関係、給与、会社の文化、上司、評価制度、働き方。こうしたものは、社内でスキルや担当範囲を増やしても解決しないことがあります。
その場合は、転職を普通に選択肢に入れていいと思います。社内で経験を取りにいくことは、あくまで「欲しいのが経験である場合」の打ち手です。会社そのものを変えたいのに、社内での頑張りだけで何とかしようとする必要はありません。
転職するなら、変えたいことが次の会社で本当に変わるのかを確かめることが大切です。求人票から仕事の中身を読み取る方法はEC担当の求人票の読み方で、面接で確かめる方法はEC担当の転職面接で確認したいことで整理しています。
「スキルアップしたい」は本当の転職理由か
ここで一度、立ち止まって考えてみてほしいことがあります。「転職してスキルアップしたい」と思っている人でも、本当の理由は別のところにあることがあります。
人間関係
上司や同僚との関係がしんどいけれど、それを理由にするのは気が引けて、「スキルアップ」という言葉に置き換えている。そういうこともあると思います。
給与
本音は年収を上げたい、という場合です。それ自体はまっとうな理由です。ただ、スキルアップが目的だと思い込んでいると、年収が上がらない会社を選んでしまうこともあります。
評価
頑張っているのに認められない、という不満がスキルアップの言葉に隠れていることもあります。この場合、変えたいのはスキルではなく、評価のされ方です。
働き方
残業や休日対応、働く場所や時間。働き方への不満も、「もっと成長できる環境へ」という言葉に置き換わりやすいものです。
だから最初に、「なぜ転職したいのか」を整理します。そのうえで、本当にスキルを学びたいだけなら、転職でなければならないのかも考えてみてください。今の会社で取りにいける経験かもしれませんし、転職でしか得られない経験かもしれません。どちらかを見極めることが、次の選択を間違えにくくします。
転職を考える前に整理したい問い
- なぜ転職したいのか
- 何を変えたいのか
- それは本当にスキルの問題か
- 給与への不満が中心ではないか
- 人間関係が中心ではないか
- 評価への不満が中心ではないか
- 今の会社で変えられないことか
- 次の会社なら本当に変わりそうか
転職したい理由を整理しないまま転職すると、次の会社でも同じ不満を持つ可能性があります。これは転職を止めるための話ではありません。転職で何を変えるのかをはっきりさせるための整理です。何がネックで、何を変えたいのかを深掘りする方法は、EC担当を辞めたいと思ったときに整理したいことでまとめています。整理した理由を面接でどう伝えるかは、EC担当の志望動機の考え方で扱っています。
副業という選択肢もある。ただし無理にやらなくていい
今の会社で積めない経験を、副業で補うという選択肢もあります。本業ではできない領域を試したい、本業を続けながら別の商材やモールに触れてみたい、という場合には有効です。
ただ、正直に言うと、副業もありだけれど、そこまで毎日毎日働くのはきつい、というのが私の感覚です。本業で疲れているのに、平日の夜も休日も仕事に使って市場価値を上げよう、とは言えません。
副業は、転職を避けるために必ず通らなければならないルートではありません。副業でしか積めない経験があり、それを無理なく続けられるなら選択肢のひとつ、くらいに考えておけば十分です。
残るか転職するかより「何を変えたいか」を整理する
まず、転職したい理由を整理する。次に、今の会社で欲しい経験を取れるかを確認する。取れるなら、今の環境を使って経験を積む選択肢があります。取れない、あるいはそもそも変えたいのが給与や人間関係、評価制度、会社の文化なら、転職も選択肢になります。
そのためにも、今の自分がどこまで経験を積めていて、次に何を伸ばしたいのかを把握しておくと、判断がしやすくなります。
自分の現在地を整理したい方へ
今の会社で経験を積むか、環境を変えるかを考える前に、いまの担当範囲や裁量、積んできた経験がどの段階にあるのかを整理しておくと、判断の材料になります。EC担当のキャリア現在地診断もご活用ください。所要時間は約3分です。
大切なのは、転職そのものを目的にしないことです。最初に問うのは「転職したほうがいいか」ではなく、「なぜ転職したいと思っているのか」。そして、次の環境で何を変えたいのかまで言葉にできれば、残る場合も、転職する場合も、その選択に納得しやすくなります。

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