EC担当の「実績」とは?売上○%アップだけでは伝わらない経験の中身

この記事でわかること

  • EC担当の「実績」を、売上の伸び率だけで捉えないほうがいい理由
  • 実績を「課題 → 判断 → 施策 → 数値の変化 → 振り返り → 次の改善」で捉える考え方
  • 失敗した施策や、代理店が実行した施策を実績として扱えるかどうか
  • 「実績がない」と感じているEC担当者が、日常業務から実績を見つける方法

EC担当として転職を考えると、「アピールできる実績がない」と感じる人は少なくないと思います。売上を大きく伸ばした経験がない。数字で語れる成果がない。

ただ、それは実績を「売上○%アップ」という結果だけで捉えているからかもしれません。この記事では、職務経歴書の書き方の手前にある、EC担当の実績をどう捉え、どう見つけるかを扱います。

目次

EC担当の実績は「売上○%アップ」だけではない

転職サイトや職務経歴書の解説では、「前年比120%」「CVRを1.8%から2.4%に改善」のように、成果を数字で書くことがよく勧められています。数字で示すこと自体は大切です。

ただ、私が「前年比120%」という数字を見たとき、まず考えるのは「どうやって?」と「それに再現性はある?」です。数字そのものより、その数字の裏で何が起きていたのかを知りたくなります。

私が転職で実績をアピールするなら、課題をどう見つけ、その課題をどう潰し、結果として売上にどう貢献したかを話します。売上の数字は、その話の最後に出てくるものです。

実績は「課題から次の改善まで」で捉える

私は、EC担当の実績を次の流れで捉えています。

実績を構成する6つの要素

  1. 課題:何が問題だったのか。どうやって見つけたのか
  2. 判断:なぜそれを優先すべき課題だと考えたのか
  3. 施策:何をしたのか
  4. 数値の変化:どの数字がどう動いたのか
  5. 振り返り:なぜその結果になったと考えるか
  6. 次の改善:その結果を受けて、次に何をしたか

「売上○%アップ」は、このうち4番目だけを切り取ったものです。前後がつながって初めて、その数字が本人の判断によるものだと伝わります。

売上130%より、説明できる110%のほうが評価できる

たとえば、次の2人がいたとします。

AさんBさん
売上前年比130%前年比110%
課題説明できない何が課題だったかを説明できる
施策何をしたかは話せるが、なぜかは曖昧なぜその施策を選んだかを説明できる
伸びた理由分からないどこが効いたと考えているかを説明できる
次の打ち手特にない改善した内容と、次にやることまで話せる

私はBさんのほうを評価します。Aさんの130%は、たまたま市場が伸びたのかもしれないし、商品の力だったのかもしれません。本人も理由を説明できないなら、次の会社で同じように伸ばせるかは分かりません。Bさんは数字こそ小さいですが、次の環境でも同じように考えて動けそうだと想像できます。

売上以外も実績になる

「売上を大きく伸ばしていないから、実績がない」と考える必要はありません。何かを改善すれば、何らかの数字は動いているはずです。

領域改善したこと(例)動く数字(例)
広告配信先や予算配分を見直したROAS、CPA、広告費率
商品ページ訴求や画像を変えたCVR、離脱率
利益値引きの頻度や送料設定を見直した粗利率、利益額
代理店管理レポートの見方や指示の出し方を変えた施策の実行スピード、改善サイクルの回数
在庫発注や在庫の配分を調整した欠品率、在庫回転
業務改善手作業を仕組み化した作業時間、ミスの件数

売上に直接つながらない改善でも、その数字が動いた理由と、それが事業にとってなぜ意味があったのかを説明できれば、実績として十分に語れます。

メーカーECでは「売上が伸びた」だけでは実力が見えにくい

特にメーカーECでは、商品の力やブランドの力で売上が伸びることがあります。新商品がヒットした、ブランドの認知が上がった、テレビや店頭で話題になった。こうしたときは、EC担当が特別なことをしていなくても売上は伸びます。

そのため、私はメーカーECの実績を見るときに、売上が伸びたという結果より、本人が具体的に何をしたのかを見ます。商品の力で伸びた時期に、在庫を切らさないように調整した、広告を追加して取りこぼしを減らした、といった動きがあれば、それは本人の実績です。売上が伸びたこと自体を自分の手柄として話すより、そのほうがずっと伝わります。

失敗した施策も、説明できれば評価材料になる

実績というと成功した施策を思い浮かべがちですが、失敗した施策も重要です。失敗したこと自体はマイナスではありません。問われるのは、その失敗をどう扱ったかです。

失敗施策で説明したいこと

  • なぜその施策を選んだのか
  • 何が間違っていたのか
  • どの読みが甘かったのか
  • 失敗が分かったあと、何をしたのか
  • 止血策として何をしたのか
  • 次の施策にどうつなげたのか

たとえば架空の例ですが、セールで大きく値引きしたのに売上が思ったほど伸びず、利益だけが減ったとします。そこで、値引き率ではなく商品の選び方に問題があったと気づき、すぐに値引き対象を絞って損失の拡大を止めた。次のセールでは、過去の売れ筋と在庫を見て対象商品を選び直した。

ここまで説明できれば、失敗は「判断して、間違いに気づき、手を打ち、次に活かした経験」になります。特に止血策は、実務を任せられるかどうかを見るうえで大事なポイントです。うまくいかなかったときに被害を小さくできる人は、安心して任せられるからです。

代理店が実行した施策は、自分の実績と言えるか

メーカーのEC担当者の中には、広告運用などを代理店に任せている人も多いと思います。「代理店がやったことを、自分の実績として話していいのか」と迷うこともあるかもしれません。

私の考えでは、代理店が施策を実行していても、メーカー側の担当者がその施策のOK・NGを判断し、数字を確認しながら意思決定しているなら、自分の実績として説明していいと思います。何をやるかを決め、結果を見て次の方針を出しているのは担当者自身だからです。

一方で、代理店がすべてを判断して実行し、本人はその内容を理解していない、というケースは本人の実績とは言えません。面接で「なぜその施策にしたのですか」と聞かれて答えられなければ、すぐに伝わってしまいます。

本人の実績として説明できる本人の実績とは言いにくい
代理店の提案を見て、実施するかどうかを自分で判断した代理店の提案をそのまま承認していた
数字を確認し、方針の変更を指示したレポートを受け取るだけだった
なぜその施策をやったのかを説明できる施策の中身や意図を理解していない

代理店を主導する側の経験が市場でどう見られるかは、代理店を使いこなせるEC人材の市場価値で詳しく扱っています。

「職務経歴書に書ける実績がない」と感じたら

「書ける実績がありません」と相談されたら、私はまず日常の業務内容を聞きます。特に、改善したことです。大きな売上実績を探すのではなく、普段の仕事の中で変えてきたことを探します。

日常業務を棚卸しする質問

実績を見つけるための質問

  • 以前と比べて、やり方を変えたことはないか
  • 数字を見て、何かを改善したことはないか
  • 代理店への指示の出し方を変えたことはないか
  • 広告・商品ページ・価格・在庫・運用で、見直したことはないか
  • それによって、どの数字が動いたか

こうして聞いていくと、本人が実績だと思っていなかった経験が出てくることがあります。毎月やっていたレポートの見直し、在庫の切り替えのタイミング調整、商品ページの小さな修正。当たり前の業務として流していたことでも、課題があって、判断して、何かを変えて、数字が動いていれば、それは実績です。

こうした実績を作るために、どんな力が要るのかは、EC担当のスキルの価値は目指すキャリアで変わるで整理しています。

見つけた経験を、6つの要素で組み立てる

見つけた経験は、冒頭の「課題 → 判断 → 施策 → 数値の変化 → 振り返り → 次の改善」に当てはめて整理します。全部がきれいに埋まらなくても構いません。どこが埋まっていて、どこが説明できないのかが分かるだけでも、面接での話し方が変わります。

整理した実績を職務経歴書にどう書くかは、EC担当者の職務経歴書の書き方で、担当範囲や裁量の書き方も含めて扱っています。面接では、書いた実績について「なぜ」を掘られることが多いので、6つの要素のうち判断と振り返りは特に言葉にしておくと安心です。

もし振り返ってみて、改善した経験がほとんど見つからないなら、それは実績の探し方ではなく、今の環境の問題かもしれません。今の会社でそうした経験を積めるかどうかは、今の会社で市場価値を上げられるか確認したい5つの条件で整理しています。

自分がどこまで担当してきて、どんな経験を積んできたのかを客観的に整理したい場合は、診断を使ってみるのもひとつの方法です。

自分の現在地を整理したい方へ

実績を探す前に、いまの担当範囲や裁量、積んできた経験がどの段階にあるのかを整理しておくと、どの経験を実績として話せるかが見えやすくなります。EC担当のキャリア現在地診断もご活用ください。所要時間は約3分です。

実績は「結果」ではなく「結果までの筋道」

経験年数より中身が大事だという話は、EC担当は何年経験すれば転職できるかで書きました。その中身を相手に伝える形が、実績です。

売上の伸び率が大きくなくても、課題をどう見つけ、何を判断し、何をして、数字がどう動き、次に何を変えたのかを説明できれば、それは立派な実績です。失敗した施策も、代理店と進めた施策も、自分が判断していたなら語れます。EC担当の市場価値を成果・再現性・組織通過力で整理する考え方はEC担当の市場価値とは何かで扱っていますが、実績はその3つを具体的に見せるための材料でもあります。

「実績がない」と感じたら、まずは大きな数字を探すのをやめて、日常の業務で変えてきたことを一つずつ書き出してみてください。

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この記事を書いた人

EC Career Lab運営者

EC領域で約10年。メーカーEC、ECモール企業でのメーカー支援(100社以上)を経て、現在はメーカー側で複数モールを統括し、月商1〜2億円規模のEC事業を運用しています。

メーカーECの実務とキャリアについて、現場での経験をもとに発信しています。

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