メーカーEC担当になると、早い段階で「自社EC」と「モール(Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピング・Qoo10など)」という2つの売り場に向き合うことになります。
どちらが優れているという話ではありません。集客の仕組みも、評価される指標も、成果までの時間軸も違うため、同じ発想では両方とも中途半端になります。
この記事では、実務で見てきた傾向をもとに、自社ECとモールの違いと使い分けの考え方を整理します。細かいチャネルごとの攻略法(Amazon・楽天・Yahoo!・Qoo10それぞれの運用のコツ)は、今後の実践講座で扱う予定です。ここではまず、基礎となる考え方を押さえてください。
自社ECとモール、まず何が違うのか
大きく整理すると、次のような違いがあります。
| 観点 | モール | 自社EC |
|---|---|---|
| 集客の起点 | モール内検索・モール内広告 | 自力での集客 |
| 顧客データ | 基本的に持てない | 自社で持てる |
| 競合との関係 | 同じ売場に競合が並ぶ | 競合と直接は並ばない |
| 成果が出るまでの時間軸 | 比較的短期 | 中長期で育てる前提 |
この違いを理解しないまま「とりあえず両方やる」と、どちらも中途半端な運用になりがちです。
モールで重要なのは「売れるためのファンダメンタル」
モールでは、商品力・ブランド力があるだけでは自然に売れるとは限りません。特にSEOで上位を取るためにも、広告を使って販売実績を作るという考え方が重要になります。
実際に100社以上のEC事業を見てきた中で、モールで成果が出ている企業には共通点があります。広告投資だけでなく、次のような「売れるためのファンダメンタル」が揃っています。
- レビュー数
- レビュー評価
- 販売実績
- 転売ストアの有無
- 商品ページの完成度
- 価格
- 競合環境
商品力・ブランド力が強くても、これらのファンダメンタルが弱いままでは、広告費だけがかさんでいく状態になりやすいというのが実感です。
同じ商品でも、出店先のモールによって求められる強みや購買特性は異なります。Amazon・楽天・Yahoo!・Qoo10の違いを踏まえて出店先を検討したい場合は、あわせて確認しておくと判断がしやすくなります。
自社ECで重要なのは「続ける意味」を作ること
自社ECは、モール以上に自力での集客が必要になるため、CPA(顧客獲得単価)は比較的高くなりやすい傾向があります。
そのため、単品リピート型の商材であれば、新規獲得だけで完結させず、購入後の満足度を高め、「この商品を使い続ける意味」を感じてもらう設計が重要になります。LTV(顧客生涯価値)や継続率まで含めて設計しないと、獲得したそばから離脱していく状態になりかねません。
つまり自社ECは、初回購入時点のCPAだけでなく、その後どれだけ関係を継続できるかまでを含めたKPI設計が前提になるということです。
売上が伸びない企業に共通する特徴
これまで見てきた中で、売上が伸び悩む企業にはいくつか共通する傾向があります。
- 初期投資を怖がる
- ファンダメンタル(レビュー・実績・商品ページ等)が弱い
- 転売ストアが存在し、価格や信頼を損ねている
- 競合との差別化が弱い
モールでは競合が同じ売場に存在するため、「なぜ他の商品ではなくこの商品を選ぶのか」という訴求設計が欠かせません。自社ECでは、そもそも人を呼び込む力(集客力)そのものが課題になりやすく、CPAの高さを前提にLTVまで見据えた設計が必要になります。
転売ストアが与える影響
モールで売上が伸びない要因の一つに、転売ストアの存在があります。同一商品を正規ルート以外で扱うストアが並ぶと、価格競争が起きたり、購入者からの信頼が分散したりします。
ブランド力や商品力があっても、転売ストアの存在によって「正規のファンダメンタル(レビュー・実績)」が分散してしまうと、本来得られるはずの評価が積み上がりにくくなります。これは商品力の問題ではなく、流通・販路管理の問題です。EC担当者だけで解決できないことも多く、営業部門や卸先との連携が必要になる領域でもあります。
「どちらが良いか」ではなく「どう使い分けるか」
自社ECとモールは、どちらか一方を選ぶものではなく、商品特性や事業のフェーズに応じて使い分けるものです。
新規顧客との接点を広く作りたいならモール、顧客との関係を長期的に育てたいなら自社EC、というように役割が異なります。両方を運営する企業も多いですが、その場合はチャネル間の役割の違いを整理したうえで運用することが重要です。
例えば、モールで新規顧客との接点を作り、そこで得た販売実績やレビューをブランドの信頼構築に活かしながら、自社ECでは既存顧客との関係を深めてLTVを伸ばす、という役割分担も考えられます。どちらのチャネルで何を達成したいのかが曖昧なまま両方を運営すると、施策同士が競合し、成果の判断も難しくなります。
まとめ
自社ECとモールは、集客構造も評価軸も異なります。まずはこの基本構造を理解したうえで、それぞれのチャネルに合った運用を考えることが出発点になります。
Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピング・Qoo10・自社ECそれぞれの実践的な運用方法については、今後の講座で個別に扱っていく予定です。まずはこの記事で、チャネル選びの土台となる考え方を押さえておいてください。
はじめてのメーカーEC講座|STEP 1
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