この記事でわかること
- 操作スキルの価値が、目指すキャリアによって変わる理由
- EC担当に最低限必要だと考えているスキルと、その理由
- 「広告運用ができる」より一段上の判断とは何か
- メーカーECで効いてくる「社内通過力」の中身
- 「次は何を勉強すればいい?」に答える前にやること
EC担当のスキルというと、楽天やAmazonの管理画面を操作できる、広告を入稿できる、メルマガを配信できる、といった話になりがちです。
ただ、同じスキルでも、会社員として年収を上げたいのか、フリーランスとして案件を取りたいのかで、価値の出方は変わります。この記事では、EC担当のスキルをどう捉えるかを、市場価値とキャリアの観点から整理します。どんなスキル領域があるのかを一覧で確認したい方は、EC担当者に必要なスキル5つのほうが近いと思います。
「操作できる」も価値になる。ただし価値の出方が違う
最初にはっきりさせておくと、商品登録、広告入稿、メルマガ配信、モールの管理画面操作といったオペレーションのスキルは、間違いなく価値になります。これができる人がいないとEC運営は回りません。
会社員として年収を上げる場合
一方で、会社員として年収を上げていく場面では、「操作できます」だけだと年収レンジが上がりにくいことがあります。作業を正確に速くこなせることは評価されますが、それを理由に任される範囲が広がるとは限らないからです。
フリーランスとして案件を取る場合
同じスキルでも、フリーランスなら話は変わります。商品登録やページ更新、広告の入稿を任せたい会社はありますし、そこから案件を獲得して収入につなげている人もいます。「手を動かせること」がそのまま価値として値段になる世界です。
つまり、操作スキルの価値が低いのではありません。目指すキャリアによって、同じスキルの価値の出方が変わるということです。会社員・代理店・独立で経験や評価のされ方がどう違うかは、メーカー・代理店・独立の違いで整理しています。
最低限必要だと考えているのは分析力
そのうえで、私がEC担当に最低限必要だと考えているのは分析力です。理由はシンプルで、分析ができなければ、次に何をするべきか判断できないからです。
売上が落ちたとき、アクセスが減ったのか、CVRが落ちたのか、客単価が下がったのか、特定の商品だけの問題なのか。ここが分からないまま施策を選ぶと、打ち手がその場の思いつきになります。
「広告運用ができる」より一段上の判断
分かりやすい例として、次の2つを比べてみます。
| Aの状態 | Bの状態 | |
|---|---|---|
| できること | 広告の管理画面を操作して、広告を運用できる | 広告の数字を分析し、いま何に投資すべきかを判断できる |
| 売上が伸びないとき | 入札や予算を調整する | 「広告費を増やすより、商品ページを改善したほうがいい」と判断できる |
| 見ている範囲 | 広告の数字 | 広告に加えて、ページ、価格、在庫、利益などの状況 |
私が評価するのはBです。広告を止めたほうがいい、増やしたほうがいい、そもそも直すべきは広告ではない。こうした判断ができる人は、どのチャネルを担当しても動けます。
全体最適がメーカーECの本領
この「いまどこを改善すべきか」を考える全体最適こそ、メーカーECの本領が発揮される領域だと考えています。
商品、価格、商品ページ、広告、モール、自社EC、在庫、利益。これらを見ながら、限られた時間と予算をどこに使うかを決める。担当範囲は会社によって違いますし、すべてを一人で持つとは限りませんが、判断するときに視界に入れておきたい範囲はこのくらいある、ということです。
作業力・分析力・構造理解という層で整理した見方は、EC担当のスキルマップでも扱っています。
分析だけでは終わらない。実行して、続けられるか
分析力が出発点だとしても、そこで止まると成果にはなりません。EC担当のスキルとして見たいのは、次の流れが一周しているかどうかです。
一周して初めてスキルになる
分析 → 課題発見 → 判断 → 実行 → PDCA → 再現性
数字を見て課題を見つけ、何をやるかを決め、実行し、結果を見て直す。それを別の商品やチャネルでも同じように進められれば、再現性のある力になります。この流れを転職の場面でどう説明するかは、EC担当の「実績」とは何かで整理しています。
メーカーECでは「社内通過力」も要る
ただ、メーカーECではこれだけでも足りないと感じています。良い施策を考えても、自分一人では実行できないことが多いからです。
上司の承認がいる。商品部門やブランド部門との調整がいる。在庫や物流の都合がある。代理店に動いてもらう必要もある。メーカーECは、社内調整と社外調整が本当に多い仕事です。
「コミュニケーション能力」では説明が足りない
ここで必要になる力を、私は社内通過力と呼んでいます。人当たりの良さや、話がうまいことではありません。
社内通過力の中身
- なぜその施策が必要なのかを、相手の言葉で説明できる
- 関係する人に動いてもらえる
- 社内で企画を通せる
- 上から「難しい」と言われても、会社のために必要なら実現方法を考えられる
最後の一つには、コミュニケーションというより、バイタリティや意思の強さに近いものが含まれます。一度断られたら終わりではなく、条件を変えて出し直す、小さく試せる形にする、別の部署から話を通す。そうやって前に進められるかどうかです。
ただし、強行することではない
念のため書いておくと、これは上司の判断を無視して進めることではありません。反対されるのには理由があります。ブランドの方針、在庫の制約、他チャネルとの関係。その理由を理解したうえで、どうすれば実現できるかを考える力のことです。
何でも屋か、特化型か
「EC担当は何でもできるべきか」もよく話題になりますが、これは環境によって変わると考えています。
| 環境 | 取りやすい形 | 身につきやすいこと |
|---|---|---|
| EC人材が少ない会社 | まずは何でも屋として広く担当する | EC全体の流れ、どこが売上に効くかの感覚 |
| 人員がいて分業できる組織 | 広告やCRMなど特定領域を深く担当する | その領域での深い知見と、判断の精度 |
どちらが上ということはありません。人が少ない会社なら、広く経験できること自体が価値になります。分業できる組織なら、特定領域を深く伸ばすキャリアも十分に成立します。自分の会社がどちらで、自分がどちらを伸ばしたいのかで決めれば十分です。
その先にどんな進み方があるのかは、管理職・ECスペシャリスト・事業責任者というキャリアの方向として整理しています。
「次は何を勉強すればいいですか?」と聞かれたら
市場価値を上げるために次は何を勉強すべきか、と聞かれることがあります。ただ、いきなり資格やツール、広告やSEOの勉強を勧めることはしません。
先にやるのは、経験の棚卸し
先にやりたいのは、これまでの経験を次の4つで棚卸しすることです。
| 観点 | 確認すること |
|---|---|
| 分析 | 数字を自分で見て、変化の理由を考えたことがあるか |
| 課題発見 | 「ここが問題だ」と自分で見つけた経験があるか |
| PDCA | 施策の結果を見て、次の打ち手まで動かしたことがあるか |
| 再現性 | 別の商品やチャネルでも同じ考え方で動けたか |
エピソードが少ないところが、次に取る経験
棚卸ししてみると、どこかにエピソードが集まって、どこかが薄くなっているはずです。分析はしているけれど、課題を自分で決めた経験は少ない。実行まではしているけれど、結果を見て次を変えた経験がない。そういう偏りが見えてきます。
そこが、次に取りにいく経験です。勉強が必要な場合もありますが、多くは今の仕事の中で取れます。数字の報告に原因の仮説を足す、施策をやる・やらないの判断理由を残す、代理店への依頼を目的から書く。「何を勉強するか」より先に「自分に何の経験が足りないか」を確認したほうが、次の一手は決めやすくなります。
今の会社でその経験を取りにいけるかどうかは、今の会社で市場価値を上げられるか確認したい5つの条件で整理しています。
自分の現在地を整理したい方へ
どのスキルを次に伸ばすかは、いまの担当範囲や裁量、積んできた経験によって変わります。現在地を客観的に整理したい方は、EC担当のキャリア現在地診断もご活用ください。所要時間は約3分です。
スキルの数ではなく、動かせる範囲で見る
EC担当の市場価値は、できることの数では決まりません。数字を分析して課題を見つけ、何をやるかを判断し、社内外を動かして実行し、結果を見て改善を続けられるか。そこで差がつきます。市場価値を成果・再現性・組織通過力で整理する考え方は、EC担当の市場価値とは何かで扱っています。
操作スキルも、深い専門性も、それ自体は価値です。大事なのは、自分がどのキャリアを目指していて、その道でどのスキルが価値になるのかを知っておくことだと思います。

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