メーカーECの売上を伸ばす4つの構造|施策より先に整えるべきこと
EC担当者コース LEVEL4|施策を比較して判断できる
メーカーECで売上を伸ばす方法を検索すると、クーポン施策、広告強化、SEO改善、商品ページ最適化といった具体的な施策が並びます。どれも重要です。
しかし実際にEC運営をしていると気づくことがあります。同じ施策を実施しても、伸びる会社と伸びない会社がある。違いは何か。それは施策ではなく構造です。売上は施策そのもので決まるわけではありません。施策が機能する土台があるかどうか。そこに大きな差があります。
この記事では、「自社がなぜ伸びていないのか」の原因診断ではなく、実際に売上を伸ばすためにどう構造を組み立てるかを、価格戦略・チャネル戦略・代理店活用・KPI設計という4つの構造から具体的に整理します。
もし読んでいる途中で「うちの会社はどのパターンで止まっているんだろう」と感じたら、先にメーカーECの売上が伸びない原因を診断する記事で原因を切り分けることをおすすめします。この記事では原因の深掘りはせず、構築方法に絞って解説します。
私が考える「売上が伸びる順番」
ECでは、広告を増やせば売上が伸びる、クーポンを配れば売上が伸びる、と思われがちです。しかし私自身の経験では、順番を間違えると施策はほとんど機能しません。
例えば、レビューが少ない、転売が発生している、価格が安定していない、ブランドの見せ方が整理されていない。こうした状態で広告費だけ増やしても効率は悪くなります。まずは土台を整える。その上で広告やクーポンなどの投資を行う。この順番が重要です。
売上は施策で伸びるのではなく、施策が機能する状態を作ることで伸びると考えています。「なぜ施策の数を増やしても伸びないのか」という原因側の話は、売上が伸びない原因を診断する記事で詳しく扱っているので、ここでは繰り返さず、土台の作り方に進みます。
顧客導線を土台から整える
売上を伸ばす構造の中でも、まず着手すべきは顧客導線の土台です。広告で人を呼んでも、その先の導線に穴があれば売上にはつながりません。
レビュー施策|信頼を可視化する
これまで取り組んだ施策の中で、特にインパクトが大きかったと感じるのはレビュー施策です。モールECでは、レビューは単なる装飾ではありません。比較購買環境における信頼指標です。レビュー数や評価が整うことで、CVRが安定し、売上が伸びやすくなります。
ただし注意点もあります。レビュー施策はやり方を間違えると、モール規約に抵触するケースもあります。短期的な成果だけを追うのではなく、自然にレビューが集まる仕組みを作ることが重要です。
転売対策|価格の土台を守る
もうひとつ重要だったのが転売対策です。転売対策は直接売上を伸ばす施策ではありません。しかし、長期的には非常に重要です。
例えば、スポットで価格調整を行い、転売を抑制する。これは単なる値下げではありません。ブランド価値を守る、本来の顧客へ商品を届ける、モール内競争を正常化するという意味があります。転売対策を行うことで、レビューや価格戦略も機能しやすくなります。
商品ページ改善だけでは伸びない理由
EC担当者であれば、一度は商品ページ改善に力を入れたことがあると思います。私自身も、改善すれば売上が伸びると思っていました。しかし実際には、思ったほど成果につながらないこともあります。
理由はシンプルです。そもそも人が来ていない場合、どれだけ商品ページを改善しても売上は大きく変わりません。また、レビューや価格戦略など、別のボトルネックが存在しているケースもあります。商品ページ改善は重要ですが、売上構造全体の中で考えなければ効果は限定的になります。
売上が落ちた時に最初に見る数字
売上が落ちた時、私が最初に見るのは売上ではありません。まず確認するのは、セッション数とCVRの2つです。売上は結果だからです。
訪問者数が減ったのか、購入率が下がったのか。ここを分解しないまま施策を打っても、本当の原因には辿り着けません。この2つの数字を日常的にモニタリングしておくことが、次に紹介するKPI設計の出発点になります。
メーカーEC特有の制約とどう向き合うか
メーカーECはD2Cとは少し違います。自社ECとの価格整合性からモールだけ安くすることが難しい。ブランド毀損リスクから短期売上のために安売りできない。社内稟議があり施策実行までに時間がかかる。こうした制約の中で売上を伸ばす必要があります。だからこそ、単純な施策論では成果が出にくいのです。
重要なのは、この制約を「言い訳」にするのではなく、制約を前提とした戦略を組み立てることです。次で紹介する4つの構造は、この制約を踏まえた上で組み立てています。
モールは「椅子取りゲーム」
モールECは、検索順位、ランキング、特集枠など、限られた枠を取り合う市場です。私はよく、モールは椅子取りゲームだと思っています。
先にポジションを取った店舗が有利になる。だからこそ、短期利益だけでなく、将来のポジション獲得に投資できるかも重要になります。この考え方を社内で共有できるかどうかは、長期的な売上に大きく影響します。
モールごとに検索アルゴリズムやランキングの仕組み、ユーザーの購買特性は異なります。Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピング・Qoo10の違いを理解しておくことも、限られた枠を取りにいくうえでの前提になります。
売上を伸ばす4つの構造
POINT
私が考えるメーカーECの売上構造は、次の4つです。
① 価格戦略
価格を武器にするのか、守るのか。ポジショニングを明確にする。前述の転売対策も、この価格戦略の一部です。
② チャネル戦略(モール戦略)
検索アルゴリズム、ランキング、競合比較。モール特有の構造を理解する。どのチャネルにどう役割を持たせるかを設計します。
③ 代理店活用と組織の役割分担
代理店は運用代行ではなく、戦略実行の加速装置として活用します。ここで重要なのは、代理店に「何を依頼し、何を社内で判断するか」という役割分担を先に決めておくことです。役割が曖昧なまま任せると、施策は進んでも組織にノウハウが残りません。
④ KPI設計とリピート・CRMへの接続
何を評価するのかを明確にする。ここで見落とされがちなのが、新規獲得のKPIだけでなく、リピート・CRMのKPIまで含めて設計することです。
新規顧客をどれだけ獲得しても、リピートにつながらなければ、広告費に依存し続ける構造から抜け出せません。私の経験では、メール配信・LINE運用・定期購入施策などのCRM施策を、新規獲得と同じ土俵でKPI管理している会社ほど、広告費の変動に強い傾向があります。価格戦略・チャネル戦略・代理店活用の3つが土台だとすれば、KPI設計とCRMは、その土台の上に「売上を積み上げ続ける仕組み」を作る工程だと考えています。
この4つが整った時、施策は初めて機能します。
実行の優先順位|何から着手すべきか
4つの構造をすべて同時に整えるのは現実的ではありません。私が実務の中で意識してきた優先順位は、次のような流れです。
まず土台(レビュー・転売対策・価格の基本ポジション)を整える
次にチャネル戦略(どのモールにどの役割を持たせるか)を決める
そのうえで代理店活用の役割分担を明確にする
最後にKPI設計とCRM・リピート施策を接続し、仕組みとして回す
土台が整っていない段階でKPIやCRMから手をつけると、そもそも計測すべき数字が安定しないため、施策の効果が正しく評価できません。逆に、土台さえ整っていれば、チャネル戦略や代理店活用は状況に応じて柔軟に調整できます。
結論|売上は構造の副産物
広告。クーポン。SEO。商品ページ改善。どれも重要です。しかし、売上を決めるのは施策の数ではありません。施策が機能する構造があるかどうかです。
私自身、売上が大きく伸びた時ほど、派手な施策ではなく、土台づくりができていました。レビュー、転売対策、価格戦略、チャネル戦略、代理店活用、KPI設計とCRM。こうした基盤が整った上で、広告や販促が機能します。
メーカーECの売上は、施策の結果ではありません。構造の副産物です。この「構造」をより広い視点——市場・商品・チャネル・KPI・組織まで含めた戦略設計として整理したい方は、EC戦略の全体像もあわせてご覧ください。
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