ECマーケティングとは?認知から集客・CVR・CRMまでをつなぐ顧客接点の設計

ECマーケティングの考え方を解説するアイキャッチ画像

「ECマーケティングとは何をする仕事なのか」

EC業界に関心を持つと、SEO・広告運用・SNS・CRMといった施策名が次々に出てきます。どれも必要な仕事です。

ただ、メーカーECの現場で実際に手を動かして感じたのは、ECマーケティングは施策を個別に実行する仕事ではないということでした。

やっているのは、お客様が商品を知り、比べ、買い、また買ってくれるまでの接点を一本につなぎ、その状態を数字で確認しながら手を入れ続けることです。

この記事では、認知 → 集客 → 商品理解・比較 → 購入/CVR → CRM → リピート・ブランドファン化 → 数字での改善という流れに沿って、メーカーEC担当として実際に何を見て、何から順に判断してきたかを整理します。

なお、EC事業としてどこに投資するかという意思決定はEC戦略の全体像と投資判断、日々の運営業務そのものはECサイト運営の仕事内容、EC担当という職種の定義はEC担当とは何をする仕事かで扱っています。本記事は「接点をどうつなぐか」に絞ります。

目次

ECマーケティングとは|施策ではなく接点をつなぐ仕事

ECマーケティングとは、お客様が商品を知ってから購入し、再び購入するまでの一連の接点を設計し、つなぎ、改善していく仕事です。

現場にいると、施策単位で話が進みがちです。「広告を強化しよう」「クーポンを出そう」「レビュー施策を入れよう」。どれも間違ってはいません。ただ、施策を足しても売上が動かないことがあります。

理由はシンプルで、接点のどこかが切れているからです。

広告で人が来ても商品ページで価格に納得できなければ買われません。買ってもらえても、その後の接点がなければ二度目はありません。個々の施策が正しくても、つながっていなければ売上は積み上がりません。

だから私は、施策を「増やすもの」ではなく「どこの接点を直すためのものか」として見るようにしています。

ECマーケティングの全体像|7つの接点でつながっている

私が実務で意識している接点は、次の7段階です。

  1. 認知:どこで見つけてもらうかを決める
  2. 集客:実際にページまで来てもらう
  3. 商品理解・比較:内容を理解し、他と比べてもらう
  4. 購入/CVR:買う判断をしてもらう
  5. CRM:次につながる関係を作る
  6. リピート・ブランドファン化:継続的に選んでもらう
  7. 数字での改善:どこが詰まっているか確認し、手を入れる

重要なのは、この順番には意味があるということです。

後ろの工程だけを強化しても効きません。お客様がまだ十分に来ていない段階でCRMを作り込んでも、対象になる人がいないからです。順番に見ていきます。

① 認知|まず「どこで見つけてもらうか」を決める

認知の段階でやるのは、流入を作ることではなく、どの接点で見つけてもらうかを決めることです。

メーカーECの場合、選択肢は一つではありません。Amazonの検索結果なのか、楽天の検索結果なのか、Googleなどの検索エンジンなのか、SNSなのか、既存のお客様への案内なのか。それぞれ、届く相手も、届き方も違います。

ここを決めないまま施策に入ると、打ち手がばらけます。モールで戦うと決めたなら、そのモールの中で検索されたときに表示される状態を作ることが起点になります。自社ECを軸にするなら、検索エンジンやSNS、既存顧客との関係が起点になります。

同じ商品でも、どこを主戦場に置くかで、次の集客以降の設計がすべて変わります

まず接点を決める。実際にそこから人を連れてくるのが、次の集客です。

② 集客|モールでは広告を「販売速度を作る手段」として考える

集客の話になると、広告の位置づけが論点になります。

私の実務経験としては、Amazonなどのモールでは、広告は単なる集客手段というより「販売実績を作るための手段」として捉えて運用してきました

モール内では、売れている商品ほど検索結果で見つけてもらいやすくなる傾向があります。そのため、広告で初速の販売を作り、その実績が自然検索での露出につながっていく、という流れを狙って設計していました。

もちろんこれは私が担当した商材・カテゴリでの経験であり、すべてのモール・すべての商品で同じように働くとは限りません。アルゴリズムの詳細が公開されているわけでもありません。

それでも、「広告を出せば売れる」ではなく「広告で販売速度を作り、その先の状態を変えにいく」と考えるようになってから、広告費の使い方の判断がしやすくなりました。

広告を止めた瞬間に売上がゼロに戻る状態は、接点がつながっていないサインです。

③ 商品理解・比較|サムネイルとサブ画像で伝わっているか

ページに来てもらった後、お客様は必ず比べます

同じような商品が並ぶ中で、最初に見られるのはサムネイルです。ここで「自分が探しているものかどうか」が判断されます。その後、サブ画像で仕様・サイズ感・使い方が確認されます。

メーカーECで難しいのは、社内では当たり前の情報が、お客様には伝わっていないという点です。品質のこだわりや素材の違いは、テキストで書いても読まれません。画像で見せないと伝わりません。

比較の段階で離脱している場合、文章量が足りないのではなく、画像で答えられていないことが多いです。

④ 購入/CVR|「価格 → 画像 → レビュー」の順で見る

CVRが低いとき、私が確認する順番は決まっています。

まず価格を見る

一番最初に見るのは価格です。

ここで注意したいのは、価格を見る=値下げするという意味ではないということです。確認しているのは、競合の価格、そのモール内での相場、そしてその価格に見合う価値が商品ページで伝わっているかという3つのズレです。

高くても売れている商品はあります。その場合、価格に見合う理由がページ上で伝わっています。逆に、相場どおりの価格なのに売れていないなら、価値が伝わっていない可能性があります。

安易に下げると、利益が減るうえに、値下げをやめた瞬間に売上が戻らなくなります。まず「ズレがどこにあるか」を特定するのが先です。

価格を先に確認するのは、それ以外の施策の効果を正しく判断するためでもあります。土台がずれたまま画像を差し替えても、何が効いたのか分からなくなります。

次にサムネイル・サブ画像

価格に問題がなければ、次は画像です。

サムネイルはクリックされるかどうか、サブ画像は納得して買ってもらえるかどうかを左右します。特にサブ画像は、比較段階で生まれた疑問に答える場所として使っています。

Amazonではレビューも重要

Amazonでは、ここにレビューが加わります。

価格も画像も整っているのにCVRが上がらない場合、レビューの件数や内容が判断材料として効いていることがありました。レビューは自分でコントロールしきれない要素ですが、無視して他の施策だけを回しても改善しないことがあります。

⑤⑥ CRM・リピート|新規顧客の母数を作り、次の購入につなげる

CRMは重要です。ただ、着手する順番によって効き方が変わります

私の経験では、まず新規顧客の獲得を優先してきました。CRMは既存のお客様に対する施策なので、そもそも母数が少ない段階では効果が見えにくいからです。メール配信の仕組みを整えても、送る相手が少なければ売上は動きません。

新規が一定数積み上がってきた段階でCRMに力を入れる。この順番のほうが、私の担当した商材では結果的に早く効いてきました。

もちろん、すべてのEC事業で「必ず新規が先、CRMが後」と決まっているわけではありません。既存顧客リストをすでに持っている事業や、リピート前提の商材であれば、順序は変わります。自社がどちらの状態にあるかを見て判断する話です。

さらにその先に、ブランドファンの育成があります。

価格やクーポンで買ってもらう関係だけだと、条件が良い他社に移られます。継続的に選んでもらうには、商品やブランドそのものを気に入ってもらう必要があります。メーカーとして持っている情報や背景を伝えられるのは、この段階の強みです。

ブランドの扱い方についてはECとブランドの関係とは?で詳しく整理しています。

チャネルで設計が変わる|Amazon・楽天・自社EC

同じ「ECマーケティング」でも、チャネルによって設計はまったく違います。ここを揃えて考えると、施策が噛み合わなくなります。

Amazon

セールとレビューが大きく効きます。セールのタイミングで販売を作り、その実績とレビューが次につながっていく設計です。

楽天

ポイントとクーポンが中心になります。お客様側もポイントを前提に比較しているため、施策の組み立て方が変わります。

自社EC

初回購入の設計、定期購入、CRM、クロスセルが重要になります。モールと違って自分たちで顧客との関係を持てるので、2回目以降をどう作るかが勝負どころです。

モールごとの違いはAmazon・楽天・Yahoo!・Qoo10の違いでさらに詳しく比較しています。

同じ商品でも、Amazonでは売れて自社ECでは動かない、ということは普通に起きます。チャネルごとに接点の作り方を分けて設計する必要があります。

⑦ 数字の見方|見る頻度を分け、定義を確認してから判断する

最後が数字です。ここが接点全体をつなぎ直すための入口になります。

必要なKPIは一通り見る。ただし頻度は分ける

KPIは、必要なものは一通り確認します。ただし、すべてを同じ頻度で見る必要はありません

私の場合は、

  • 日次:売上、検索順位
  • 週次:アクセス数、CVR、広告の消化と成果
  • 月次:チャネル別の構成、リピート状況、粗利

というように分けていました。

特に売上と検索順位は毎日見ます。この2つは変化が早く、異常があればすぐ気づけるからです。逆にCVRやリピート率を毎日追っても、日々のブレに振り回されるだけでした。

KPIの分解の考え方はECのKPIとは?売上のどこに問題があるかを分解するで整理しています。

数字の定義と算出方法を確認してから判断する

もう一つ、実務で重要だと感じているのが、その数字が何を指しているのかを確認してから判断するということです。

同じ「CVR」でも、分母がセッションなのか訪問者数なのかで意味が変わります。「ROAS」も、どこまでの費用を含めているかで数字が変わります。

定義を確認しないまま数字だけを見て判断すると、間違った打ち手を選びます。しかも、間違っていることに気づけません。

数字に強い担当者ほど、出てきた数値をそのまま受け取らず、「これは何の数字ですか」「どう算出していますか」と確認しています。地味ですが、ここが判断の精度を分けます。

代理店との役割分担|提案と運用は任せ、判断とKPIは自社が持つ

メーカーECでよく見る失敗が、代理店任せになってしまうことです。

代理店は広告運用やモール施策の専門知識を持っています。提案してもらい、運用を任せること自体は合理的です。私も外部に任せる前提で仕事をしてきました。

問題は、判断まで預けてしまうことです。

代理店から提示される数値は、代理店の視点で整理されたものです。悪意があるという話ではなく、見せ方の前提が違うだけです。だからこそ、その数字をそのまま受け取らず、定義と算出方法を確認したうえで自社として判断する必要があります。

私の整理は次のとおりです。

  • 提案と運用:代理店に任せる
  • KPIの設定と判断:メーカー側が持つ

この線を引けているかどうかで、同じ代理店を使っていても結果が変わります。判断を持てていない状態だと、施策は動いているのに社内に知見が残りません。

代理店との関係の作り方はEC代理店のビジネスモデルとメーカーとの関係で整理しています。

まとめ|ECマーケティングは接点をつなぎ、数字で判断し続ける仕事

ECマーケティングは、施策を個別に実行する仕事ではありません。

認知 → 集客 → 商品理解・比較 → 購入/CVR → CRM → リピート・ブランドファン化という接点をつなぎ、どこが詰まっているかを数字で確認しながら手を入れ続ける仕事です。

実務で判断の軸にしてきたのは、次の点でした。

  • どこで見つけてもらうかを先に決めてから、集客に入る
  • モールでは広告を販売速度を作る手段として考える
  • CVR改善は価格 → 画像 → レビューの順で確認する。価格を見るのは値下げのためではなく、ズレを特定するため
  • まず新規の母数を作り、そのうえでCRM・ブランドファン育成へ進む
  • チャネルごとに設計を分ける(Amazon/楽天/自社EC)
  • 判断とKPIは自社が持つ。提案と運用は任せてよい
  • 売上と検索順位は毎日見る。ただし全KPIを同じ頻度で追わない
  • 数字の定義と算出方法を確認してから判断する

施策を増やす前に、接点のどこが切れているかを見る。順番はそこからです。


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この記事を書いた人

EC Career Lab運営者

メーカーECを中心に10年の実務経験。ECモール企業で100社以上のメーカー支援に携わり、メーカー側では月商3億円規模のECアカウント運営、月商1〜2億円規模のEC事業運用を経験。

EC担当者の仕事・市場価値・キャリア・組織構造を、実務経験をもとに整理して発信しています。

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