売上は伸びているのに、「それってモール同士で取り合ってるだけじゃない?」と言われた話。

Amazonも、楽天も、Yahoo!も、前年を超えていた。

特定のモールだけが伸びて、別のモールが落ちていたわけではない。

それぞれのモールで施策を進めて、全体として売上が伸びていた。

当時の自分としては、当然それをポジティブに捉えていた。

そんな状況を社内で共有したとき、経営に近い立場の人から、こんなことを言われた。

「それって、モール同士でお客さんを取り合っているだけじゃない?」

正直、最初に思ったのは、

「それ、どうやって判断するんだろう。」

だった。

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カニバリは、たしかにあり得る

言っていることがまったく分からなかったわけではない。

モール間のカニバリは、普通にあり得ると思う。

たとえば、これまでAmazonで買っていた人が、楽天のキャンペーンをきっかけに楽天で買う。

そういうことは当然ある。

でも、自分が引っかかったのはそこではなかった。

今回楽天で買った人が、楽天で施策をやっていなかったらAmazonで買っていたのか。

それとも、そもそも買っていなかったのか。

あるいは別のチャネルで買っていたのか。

そこまでを、普段見ているモールのデータだけで判断するのは難しい。

しかも、そのときはAmazonも楽天もYahoo!も、それぞれ前年を超えていた。

だから内心では、

「カニバリの可能性だけを理由にするなら、じゃあ各モールの施策を全部やめるのか?」

とも思った。

もちろん、実際にはそんな言い方はしていない。

「可能性はある。でも、今のデータでは判断できない」

そのとき自分が返したのは、だいたいこんな内容だった。

一部の顧客がモール間を移動していて、カニバリが発生している可能性はある。

ただ、今取得できているデータだけで、それがどの程度起きているのかを正確に判断するのは難しい。

一方で、事実として確認できているのは、各モールがそれぞれ前年を超えていること。

だから、少なくとも現時点ではそこを見ていくしかない。

そういう趣旨のことを伝えた。

すると、

「今後は、そういうところも見ていってほしい」

という話になった。

そのときは、結構モヤモヤした。

「見られないものを、どうやって見るんだ。」

という感覚が残った。

データがないものを求められても困る。

当時は、かなりそう思っていた。

時間が経って、少し考え方が変わった

今でも、当時の自分の回答が間違っていたとは思っていない。

分からないものを、分かったように答える方が危ない。

データから判断できないことを「たぶんこうです」と言い切ってしまえば、その前提で次の意思決定が進んでしまう。

ただ、時間が経ってから考えると、自分にももう少しできることがあったと思う。

経営に近い立場の人が、Amazonや楽天、Yahoo!で何のデータが取れて、何のデータが取れないのかまで把握しているとは限らない。

それは別におかしなことではない。

EC担当者は毎日のように管理画面を見ている。

でも、社内の全員が同じものを見ているわけではない。

だとすると、

「そのデータは取れません」

で終わるだけでは、少し足りなかったのかもしれない。

分からないなら、何なら分かるのか

今なら、もう少し分けて説明すると思う。

事実として確認できていること。

可能性として考えられること。

今のデータでは検証できないこと。

そして、検証できないとしても、意思決定するために代わりに何を見るのか。

今回でいえば、

「モール間で顧客が移動している可能性はあります」

と、

「今回の売上増加はモール間のカニバリによるものです」

は、まったく違う。

前者は仮説。

後者は事実としての断定になる。

この二つを混ぜないことは、ECの仕事ではかなり大事だと思う。

仮説を持つことが悪いわけではない。

むしろ、数字を見て「もしかするとこうではないか」と考えることは必要だと思う。

でも、

「可能性がある」

が、

「きっとそうだろう」

になって、

いつの間にか、

「そういうことだ」

として扱われてしまう。

そうなると、施策の評価も変わってしまう。

本当は伸びている施策を止めるかもしれないし、逆に別の問題を見落とすかもしれない。

だから、事実と仮説の境目は曖昧にしない方がいい。

EC担当には、「説明する仕事」もある

EC担当の仕事というと、施策を考えたり、広告を見たり、商品ページを改善したり、数字を分析したりする仕事をイメージしやすい。

自分も、以前はそちらに意識が向いていたと思う。

でもメーカー側でECをやっていると、それだけでは終わらない。

自分たちが見ている数字を、社内の人が同じように理解しているとは限らない。

「売上が伸びました」

だけではなく、

なぜ伸びたと考えているのか。

どこまではデータで確認できているのか。

どこから先は仮説なのか。

そして、分からない部分が残った状態で、何を判断材料にするのか。

そこまで整理して伝えることも、EC担当の仕事なのだと思う。

あのときの自分は、

「見られないものを、どうやって見るんだ」

と思った。

今でも、見られないものは見られない。

そこは変わっていない。

ただ、今ならその次に、

「だから、ここまでは分かります。ここからは仮説です。そのうえで、今はこの数字を見て判断しましょう」

まで伝えたい。

数字を見ることと、数字を説明することは、たぶん別のスキルだ。

どこまでが事実で、どこからが仮説なのか。

その境目を整理して、社内でECの見方をそろえていく。

それも、EC担当者の仕事なのだと思う。

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この記事を書いた人

EC Career Lab運営者

EC領域で約10年。メーカーEC、ECモール企業でのメーカー支援(100社以上)を経て、現在はメーカー側で複数モールを統括し、月商1〜2億円規模のEC事業を運用しています。

メーカーECの実務とキャリアについて、現場での経験をもとに発信しています。

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