この記事でわかること
- EC担当の転職面接を「期待のすり合わせ」として使う考え方
- 「私に何を期待していますか?」を軸にした確認の仕方
- 代理店・雑務・EC体制について、何をどう聞くか
- KPIの数字ではなく、その設定根拠を聞く理由
- 抽象的な逆質問を、入社後の仕事が見える質問に変える方法
EC担当の転職面接で「何か質問はありますか」と聞かれたとき、何を聞けばいいのか迷うことがあります。好印象を与える質問を用意しておくべきなのか、それとも本当に気になっていることを聞いていいのか。
この記事で扱うのは、面接官に評価される逆質問ではありません。求人票だけでは分からなかった入社後の仕事を、面接で確認する方法です。
ECの転職面接は「質問に答えるだけの場」ではない
面接は、企業が候補者を評価する場だと考えられがちです。もちろんその面はあります。ただ実際には、それだけではありません。
会社は候補者に何を期待しているのか。候補者はその期待に応えられそうか。候補者がやりたい仕事と、会社が任せたい仕事は合っているか。面接はこれを双方ですり合わせる場でもあります。
EC担当の場合、このすり合わせは特に大事です。求人票の読み方の記事でも触れたように、EC求人は「EC運営全般」「広告運用」と書かれていても、実際に何をする仕事なのかが読み取りにくいことが多いからです。求人票で立てた仮説は、面接で確かめるしかありません。
まず確認したいのは「私に何を期待していますか?」
面接で確認したいことはいくつもありますが、中心に置きたいのはこの質問です。
中心に置く質問
「この採用で、私にどのような役割を期待されていますか?」
同じ「EC運営」でも会社が求める役割は違う
求人票に「EC売上拡大」「EC運営全般」と書かれていても、会社が採用する人に本当に期待していることは会社によって違います。
| 会社が期待していること | 入社後に中心になりそうな仕事 |
|---|---|
| 手を動かしてほしい | 広告運用・商品ページ・販促設定などの実務 |
| 売上を伸ばしてほしい | 施策の立案と実行、数字の改善 |
| 分析してほしい | 数字から課題を見つけ、打ち手を決める |
| 代理店を管理してほしい | 提案の評価、優先順位づけ、方針の共有 |
| 社内を動かしてほしい | 営業・商品企画・物流などとの調整 |
| 組織や仕組みを作ってほしい | 体制づくり、業務の標準化、属人化の解消 |
どれも間違っていません。ただ、会社が「手を動かしてほしい」と考えているところに「分析と施策設計をやりたい」人が入ると、入社後にズレを感じる可能性があります。逆も同じです。
この質問への答えが、その後に聞くことすべての前提になります。期待が分かれば、体制も、代理店との関係も、KPIも、その期待との関係で見られるようになるからです。
EC体制と担当範囲を確認する
誰が何を担当しているのか
私自身、EC関連職の転職面接では、EC体制や担当範囲、雑務がどのくらいあるかを確認していました。聞いておくと、入社後の日々がかなり具体的にイメージできるようになります。
確認したいのは、たとえば次のようなことです。
EC担当は何人いるのか。
EC責任者はいるのか。
自分は誰にレポートするのか。
代理店や制作担当はいるのか。
物流や経理、法務とはどう分担しているのか。
施策の意思決定は誰がするのか。
ただし、人数が多いから良い、専任組織があるから成熟している、とは限りません。少人数でも裁量が大きく、多くの経験を積める会社もあります。見たいのは体制の大きさではなく、その体制の中で自分に何が期待されているのかです。
雑務を誰が担当するのかも確認する
売上計上、販促費の処理、契約関連、その他の事務処理。ひとつずつは小さくても、積み重なるとEC担当の時間をかなり使います。求人票にはまず書かれないので、面接で聞くしかありません。
聞き方の例
「売上計上や販促費の処理、契約関連は、EC担当が担当することが多いでしょうか。それとも経理や法務などの担当部署がありますか?」
雑務があること自体は問題ではありません。会社員である以上、一定の事務作業は発生します。確認したいのは、自分が想定している仕事内容と、実際の業務配分に大きなズレがないかどうかです。
代理店がいるなら「自分との役割の違い」を聞く
代理店について聞くとき、「代理店は使っていますか?」で終わらせると、あまり情報が得られません。代理店がいるかどうかより、代理店と自分の役割がどう違うのかのほうが、入社後の仕事に直接関わるからです。
私が今聞くなら、代理店の有無を確認したあと、こう続けます。
続けて聞きたいこと
「代理店と私の役割の違いは何ですか? 私には何を期待されていますか?」
代理店がいる会社でも、分担はさまざまです。代理店が広告の実運用・入稿・レポート作成・施策提案を担い、社内のEC担当が数値分析・課題設定・優先順位の決定・予算管理・施策判断・社内調整・代理店のディレクションを担う形もあります。一方で、社内の担当者も管理画面を触り、代理店と一緒に運用している会社もあります。
どちらが良いということではありません。自分が手を動かす経験を積みたいのか、全体を見て判断する経験を積みたいのかによって、合う分担は変わります。代理店を管理する側の経験が市場でどう見られるかについては、代理店管理がなぜ評価されにくいのかで扱っています。
KPIは数字ではなく「なぜその目標なのか」を聞く
KPIについて聞くときも、「KPIは何ですか?」と数字だけを確認するより、その数字がどう決まっているのかを聞くほうが、得られる情報が多くなります。
「昨対120%」は何を根拠に決めているのか
たとえば、EC売上の目標が前年比120%だったとします。この120%は、何を根拠に置かれているのでしょうか。
市場の成長率から逆算しているのかもしれません。新商品の計画や広告予算の増額、在庫の確保、チャネルごとの伸び、利益計画、経営計画全体との整合。目標の根拠にはいろいろな可能性があります。
聞き方の例
「ECのKPIはどのように設定されていますか? たとえば前年比の売上目標の場合、何を根拠にその数字を決めていますか?」
根拠を組織として説明できる場合と、前年より2割伸ばすという数字だけが置かれている場合では、EC担当が働くときの環境が違う可能性があります。前者なら、目標に対して何をすればいいかを筋道立てて考えやすい。後者なら、目標の置き方から一緒に考える余地がある、とも言えます。
ただし、根拠をその場で答えられないことを、成熟していない会社のサインだと決めつける必要はありません。面接官の役割によっては把握していないこともありますし、社外に出せない情報もあります。あくまで、その会社がECの目標をどう考えているのかを知る材料として扱います。
商品について確認すると、入社後の仕事が見えてくる
求人票の段階では「この商品を自分で売れるか」を考えるところまでしかできませんが、面接ではもう少し踏み込めます。
聞ける範囲で、EC売上の推移、主力商品、売上の構成、ECでこれから伸ばしたい商品、会社としてECに何を期待しているのか。こうしたことが分かると、入社後に何を改善する仕事になりそうかを考える材料になります。
CVRだけで商品力を判断しない
今の自分が聞くなら、CVRは確認したい数字のひとつです。CVRが分かると、その会社のECの状況がかなり見えてくると考えています。
ただ、CVRだけで商品力を断定することはできません。CVRは流入の質、価格、商品ページ、ブランドの認知度、在庫の状況、キャンペーン、チャネル、新規と既存の比率など、多くの要素に左右されます。CVRが低くても商品力に問題があるとは限らず、流入の設計に改善余地があるだけかもしれません。
また、売上やCVRは機密情報として開示できない会社も多くあります。答えを求めるのではなく、聞ける範囲で聞く、くらいの温度感がちょうどいいと思います。
この会社でEC担当として何を身につけられるか
今の自分が面接で確認したいこととして、もうひとつ挙げるなら、この会社でEC担当としてどうキャリアを広げていけるのか、です。
キャリアアップを役職名だけで考えない
「どのようなキャリアアップができますか?」と聞くだけでは、返ってくる答えも抽象的になりがちです。役職名よりも、経験を積んだあとに何を任されるようになるのかを聞くほうが、実態が見えます。
EC担当の次にどんな役割があるのか。EC責任者というポジションはあるのか。売上だけでなく利益や予算まで見るようになるのか。チームマネジメントへ進むのか、EC以外のマーケティングや事業側へ広がっていくのか。
会社によってキャリアの広がり方は違いますし、どれが正解ということもありません。自分が進みたい方向と、その会社で広がっていく方向が重なっているかを確かめられれば十分です。EC責任者に近づくと何が変わるのかはEC責任者とEC担当者の違いで、キャリア全体の広がり方はEC担当のキャリアマップで整理しています。
ここまで見てきたとおり、面接で何を確認すべきかは、自分が次に何を伸ばしたいかによって変わります。広告運用を深めたい人と、分析や施策設計を伸ばしたい人と、EC責任者を目指す人では、聞くべきことが違います。その軸が自分の中で定まっていないと、何を優先して聞けばいいのかも決まりません。
自分の現在地を整理したい方へ
いまどこまでを任されていて、次にどんな経験を積みたいのか。面接で何を優先して確認するかを決める前の整理として、EC担当のキャリア現在地診断もご活用ください。所要時間は約3分です。
抽象的な逆質問を、仕事が見える質問に変える
ここまでの内容を、実際の聞き方に落とし込んでみます。大事なのは質問の数ではなく、何を確かめるための質問なのかを自分で分かっていることです。
| 確かめたいこと | 抽象的な聞き方 | 仕事が見える聞き方 |
|---|---|---|
| 何を期待されているか | どんな人を求めていますか? | この採用で、私にどのような役割を期待されていますか? |
| 誰とどう仕事をするか | 代理店を使っていますか? | 代理店にはどこまでを任せていて、社内のEC担当には何を期待していますか? |
| 何を自分で決められるか | 裁量はありますか? | 販促施策を実施するとき、EC担当が自分で決められる範囲はどこまでですか? |
| 何を基準に成果を見られるか | KPIはありますか? | ECのKPIはどう設定していますか? 前年比の目標なら、何を根拠に決めていますか? |
| 何に時間を使う仕事か | 業務量は多いですか? | 売上計上や販促費の処理、契約関連はEC担当が持つことが多いですか? |
| その先に何があるか | キャリアアップできますか? | いまのEC担当の方は、経験を積んだあとにどのような役割を任されていますか? |
左の聞き方が悪いわけではありません。ただ、右の形にすると、相手が具体的な状況を思い浮かべて答えやすくなり、こちらも入社後の仕事を想像しやすくなります。
気になることは聞いていい。ただし質問リストの消化を目的にしない
個人的には、気になることは全部聞いたほうがいいと思っています。入社してから「聞いておけばよかった」と思うよりは、ずっといいからです。
ただ、優先順位で言えば、逆質問よりも先に大事なことがあります。面接官がこの採用で何を求めているのかを理解し、自分の経験や希望とのズレがないようにやり取りすることです。質問リストを全部消化することが目的になると、肝心のすり合わせがおろそかになります。
面接の会話の中ですでに答えが出ていることを、逆質問でもう一度聞く必要はありません。面接全体を通して、会社側の「この人に何を任せたいか」と、自分側の「何をやりたいか、何を伸ばしたいか」が重なっているかを確かめられれば十分です。
なお、面接官によって答えられる範囲は変わります。一般的な目安として、人事の方は組織・評価制度・採用背景に、現場の責任者はKPI・代理店・担当範囲・実際の業務に、経営層はEC事業の位置づけや今後の方針・投資に詳しいことが多いようです。ただし会社によって役割は違うので、相手に合わせて聞く内容を調整する、くらいに考えておけば十分です。
求人票で立てた仮説を、面接で確かめる
転職の準備を順番に並べると、こうなります。
| 段階 | やること |
|---|---|
| 自分の経験を整理する | これまで何を任され、何を考え、どう変えたか |
| 求人票を読む | 次の会社で何を任されそうか、仮説を立てる |
| 面接で確かめる | 仮説が合っているか、期待と自分の希望が重なっているか |
自分の経験をどう言語化するかはEC担当者の職務経歴書の書き方で、求人票から仮説を立てる方法はEC担当の求人票の読み方で扱っています。面接は、その2つをつなぐ場です。
面接で聞くべきことは、何を聞けば好印象かでは決まりません。自分はこの会社で何をすることになるのかを具体的に想像できるかどうかで決まります。会社の期待と、自分にできることと、自分が次に伸ばしたいこと。この3つが重なっているかを確かめるために、面接の時間を使ってみてください。

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