この記事でわかること
- 「辞めたい」と思ったとき、最初に確かめたい「何がネックなのか」
- ネックを「何を変えたいのか」に言い換える考え方
- 転職で変えられる可能性があるもの
- 市場価値によって、狙える役割や条件が変わるということ
- 「辞めたい」と「転職準備」を分けて進める流れ
EC担当として働いていて、「もう辞めたい」と思うことがあるかもしれません。
この記事は、辞めるべきか、残るべきかを判定する記事ではありません。どちらが正しいかは、その人が何に困っていて、何を変えたいのかによって変わるからです。
ここで整理したいのは、辞めたいと思ったときに、転職する前に何を考えておくと次の選択を間違えにくいかです。
まず「何がネックになっているのか」を確かめる
もし過去の自分から「EC担当を辞めたい」と相談されたら、私が最初に聞くのはこれです。
最初に聞くこと
「何がネックになっているの?」
「辞めたい」という言葉だけでは、次に何をすればいいのかは決まりません。同じ「辞めたい」でも、中身は人によってまったく違います。
「辞めたい」の中身はひとつではない
EC担当が辞めたいと感じる理由には、たとえば次のようなものがあります。
| 分類 | ネックになりやすいこと |
|---|---|
| お金 | 年収が上がらない、評価が給与に反映されない |
| 人 | 人間関係、上司との相性 |
| 意思決定 | トップダウンで決まる、裁量がない |
| 仕事の中身 | 担当範囲が狭い/広すぎる、雑務が多い |
| 事業環境 | 商品に競争力がない、ECへの投資が少ない |
| 働き方 | 残業、休日対応、働く場所や時間 |
| キャリア | この先の経験が見えない、スキルアップできない |
ネックが年収なのか、上司なのか、商品なのかで、次の選択肢は変わります。年収がネックなら評価制度や給与レンジを見る必要がありますし、商品がネックなら、どれだけ自分が頑張っても変えにくい部分かもしれません。
ひとつに絞れないことも多いと思います。その場合は、いちばん大きいものから順に並べておくだけでも、次に考えることがはっきりします。
ネックが「EC」という仕事そのものにある場合
なかには、今の会社ではなく、EC担当という仕事そのものが合わないと感じている人もいると思います。数字に追われ続けることや、多くの関係者との調整がしんどい、という場合です。
この記事は主に「今の会社でのEC担当を辞めたい」場合を扱います。EC職を続けるかどうか自体に迷っている場合は、EC担当がキャリアに悩みやすい理由や、EC担当の魅力ときつさをまとめた記事のほうが近いかもしれません。
ネックを「何を変えたいのか」に言い換える
ネックが分かったら、次はそれを「何を変えたいのか」に言い換えてみます。「嫌なこと」のままだと、次の会社でも同じことが起きていないかを確かめにくいからです。
| 今のネック | 変えたいこと(言い換え) |
|---|---|
| 上司が合わない | 判断の仕方や、仕事の任され方を変えたい |
| トップダウンで決まる | 自分で決められる範囲を広げたい |
| 雑務ばかり | 分析や施策に使える時間を増やしたい |
| 年収が上がらない | 評価のされ方か、給与レンジそのものを変えたい |
| 商品が売れない | 勝負できる商品やブランドで働きたい |
| 成長している実感がない | 次に積みたい経験がある環境に移りたい |
こうして言い換えると、「何を変えれば辞めたい気持ちが解消するのか」が見えてきます。それが今の会社の中で変えられることなのか、会社を変えないと難しいことなのかも、考えやすくなります。
転職で変えられる可能性があるもの
私は基本的には、転職したら良い方向に行くと思っています。今の環境で行き詰まっているなら、環境を変えることで状況が動く可能性は十分にあります。
転職によって変えられる可能性があるのは、たとえば次のようなものです。
上司。
組織や意思決定のされ方。
扱う商品。
担当範囲。
裁量。
年収。
働き方。
どれも、今の会社にいる限り自分の力だけでは変えにくいものです。上司やECへの投資方針、扱う商品は、個人の努力で動かせる範囲を超えていることが多いからです。
ただし、転職すれば必ず良くなるわけではありません。次の会社にも別の上司がいて、別の制約があります。だからこそ、先に「何を変えたいのか」をはっきりさせておくことが大事になります。変えたいことが明確なら、次の会社でそれが本当に変わるのかを確かめられるからです。
転職するなら「市場価値」という現実もある
一方で、転職するならある程度の市場価値が必要だとも考えています。
ここで言いたいのは、「市場価値が低いなら転職するな」ということではありません。市場価値によって、応募できるポジションや、提示される条件、任される役割が変わる可能性があるということです。
「今の会社が嫌か」と「市場で何を評価されるか」は別の問い
辞めたい気持ちが強いときほど、「今の会社が嫌かどうか」だけで考えてしまいがちです。でも転職では、もうひとつの問いがあります。今の自分は、転職市場で何を評価されるのかです。
たとえば「裁量がほしい」から転職するとしても、裁量のあるポジションに採用されるには、これまでにどこまで判断してきたかを説明できる必要があります。変えたいことと、市場で評価されることが噛み合っていると、狙える選択肢が広がります。
EC担当の市場価値として見られやすいこと
| 観点 | 見られやすいこと |
|---|---|
| 担当範囲 | どこからどこまでを担当してきたか |
| 裁量 | 自分で決めてきたことは何か |
| 複数モール経験 | ひとつのチャネルだけでなく、横断して見てきたか |
| 数値責任 | 売上・利益・予算のどこに責任を持ってきたか |
| 実績 | 何を考え、何を変え、どんな結果につながったか |
| 再現性 | 会社が変わっても同じように成果を出せそうか |
これらがすべて揃っていないと転職できない、ということではありません。どこまで揃っているかによって、次に狙える役割が変わる、ということです。市場価値がどう積み上がっていくのかは、EC担当の市場価値を高める5つの行動で詳しく整理しています。
「辞めたい」と「転職準備」を分けて考える
辞めたいと思うことと、次の会社でどんなポジションを狙える状態かは、別々に考えたほうが整理しやすくなります。流れにすると、次のようになります。
「辞めたい」から転職までの流れ
- 今の環境を変えたい
- 転職も選択肢に入れる
- その前に、今の経験を棚卸しする
- 転職市場で何を評価されそうかを確認する
- 足りない経験があるなら、今の会社・副業・学習などで補えるか考える
- それでも転職するなら、次の会社で何を変えたいかを求人票と面接で確かめる
この順番で考えると、「辞めたい」という気持ちを否定せずに、次の選択を具体的にしていけます。
今の経験を棚卸しする
まずは、これまでに何を任され、何を判断し、どんな結果につながったのかを書き出してみます。辞めたい気持ちが強いと、今の会社での経験を低く見積もりがちですが、書き出してみると、説明できる経験が見つかることもあります。
担当範囲と裁量をどう言葉にするかは、EC担当者の職務経歴書の書き方で扱っています。応募するかどうかに関係なく、棚卸しの材料として使えます。
足りない経験は、今の会社や副業で補えるか考える
棚卸しをして、狙いたい役割に対して足りない経験が見えたら、それを補える場所があるかを考えます。今の会社で担当範囲を広げてもらえるのか。副業や学習で補えるのか。
これは「辞める前に今の会社で経験を積むべき」という意味ではありません。補える見込みがあるなら選択肢のひとつになりますし、今の会社では難しいと分かったなら、それ自体が転職を考える理由になります。
なお、心身の不調が理由で辞めたいと感じている場合は、転職準備よりも先に、休むことや医療機関・専門家への相談を優先してください。
次の会社で「変えたいこと」が変わるかを確かめる
転職するなら、最初に言い換えた「変えたいこと」が、次の会社で本当に変わるのかを確かめます。トップダウンを変えたいなら意思決定のされ方を、雑務を減らしたいなら業務の分担を、成長したいなら任される範囲を見ます。
求人票から仮説を立てる方法はEC担当の求人票の読み方で、その仮説を面接で確かめる方法はEC担当の転職面接で確認したいことで整理しています。辞めたい理由がはっきりしている人ほど、面接で聞くべきことも具体的になります。
整理した「変えたいこと」を、転職理由や志望動機としてどう言葉にするかは、EC担当の志望動機の考え方で扱っています。
どの順番で進めるにしても、今の自分がどこまで担当できていて、どの経験がまだ足りないのかを知っておくと、判断がしやすくなります。
自分の現在地を整理したい方へ
辞めるかどうかを決める前に、いまの担当範囲や裁量、積んできた経験がどの段階にあるのかを整理しておくと、次の選択肢が見えやすくなります。EC担当のキャリア現在地診断もご活用ください。所要時間は約3分です。
「辞めるかどうか」より先に「何を変えたいか」を決める
辞めたいと思うのは、何かを変えたいと感じているからだと思います。その気持ち自体は、次のキャリアを考えるきっかけになります。
何がネックになっているのか。それを変えたいことに言い換えるとどうなるのか。転職で変えられる可能性はあるのか。今の自分は市場で何を評価されそうか。足りない経験を補える場所はあるか。そして転職するなら、次の会社で何を変えるのか。
この順番で整理していくと、「辞める」か「残る」かの二択ではなく、自分にとって何を変えることが一番大事なのかから次の一歩を選べるようになります。

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