EC担当の価値は「作業力」ではなく「構造理解」と「分解力」で決まる

EC担当の価値を構造理解で説明するアイキャッチ画像

この記事でわかること

  • ECの仕事で使う力を「実行する力・分析する力・設計する力」で整理する考え方
  • それぞれの力で、具体的に何ができている状態なのか
  • 商品登録や広告入稿などの実務経験を、次にどうつなげるか
  • 自分の現在地から、次に取りたい経験をどう決めるか

EC担当として働いていると、「自分は何ができるようになったのか」が分かりにくくなることがあります。楽天やAmazonの運営、広告、CRM、在庫、分析と、やることは多いのに、それがどう積み上がっているのかが見えない。何を次に勉強すればいいのかも決めにくい。

この記事では、ECの仕事で使う力を3つに分けて整理します。スキル名を並べるためではなく、自分がいまどの力を使って仕事をしていて、次にどんな経験を取るかを決めるための整理です。

目次

ECの仕事で使う力は3つに分けて考えられる

ECの仕事で使う力は、実行する力、分析・改善する力、設計・説明する力の3つに分けると整理しやすくなります。これは上下の序列ではありません。役割や担当範囲が変わると、必要になる力の組み合わせが変わる、という話です。

ひとりでモールを回している人は3つとも使いますし、大きな組織で広告だけを担当している人は実行と分析が中心になります。EC責任者であれば設計と説明の比重が上がります。どれか一つが欠けていると仕事にならない、という性質のものでもありません。

実行する力

商品登録、商品ページの更新、広告の入稿、在庫の更新、CRMの配信、レポートの作成。EC運営を回していくために欠かせない仕事です。

この力は「誰でもできる仕事」ではありません。商品点数が多ければミスなく回すこと自体が難しいですし、モールごとの仕様やルールを把握していないと、そもそも正しく設定できません。ここが安定していないと、分析も改善も始まりません。

分析・改善する力

売上やアクセス、CVR、客単価、広告の数字を見て、何が起きているのかを考える力です。

売上が落ちたときに、アクセスが減ったのか、CVRが下がったのか、客単価が落ちたのか、特定の商品だけの話なのかを分けて見る。原因の候補をいくつか挙げて、どれから確かめるかを決める。そして改善して、結果を見る。数字をどう分解するかは、ECのKPIとは?売上のどこに問題があるかを分解するための数字で詳しく扱っています。

設計・説明する力

どのKPIを追うのかを決める、予算をどのチャネルにどう配分するのかを決める、代理店と自社の役割分担を整理する。そして、なぜその判断にしたのかを、上司や他部署、代理店に説明する。

ここで問われるのは、正解を知っていることではなく、自社の状況に合わせて決められること、そしてその理由を言葉にできることです。予算配分の考え方はECの予算配分はどう決めるかで、代理店との役割分担については代理店を使いこなせるEC人材の市場価値で扱っています。

3つの力を「できる状態」と「次の経験」で並べる

言葉だけだと分かりにくいので、それぞれの力について、具体的な仕事、できている状態、次に取りたい経験を並べてみます。

力の種類具体的な仕事できている状態次に取りたい経験
実行する力商品登録、広告入稿、在庫管理、CRM配信、レポート作成任された業務を正確に運用できる数字を見て、改善できそうな点を考えてみる
分析・改善する力KPIの分析、CVR改善、広告の改善数字の変化から原因の候補を分解できる複数の施策に優先順位をつけて決める
設計・説明する力KPI設計、予算配分、チャネル設計、代理店との役割分担なぜその判断をしたのかを説明できる予算・利益・組織まで含めて判断する

これは能力のランク表ではありません。実行する力が「初級」で設計する力が「上級」ということでもありません。実際には、設計を任されている人が実行の精度を欠いていて回らない、ということも起こります。

使い方としては、自分の仕事を思い浮かべながら、どの行にいちばん時間を使っているかを確かめる。そして、その行の右側にある「次に取りたい経験」を、今の仕事の中で取りにいけるかを考える。それくらいの使い方が現実的だと思います。

商品ページ、広告、CRM、在庫管理といった具体的な業務を3つの力で整理したい場合は、EC担当のスキルマップで、「何を経験したか」だけでなく「どこまで担当したか」まで棚卸しできます。

実務から始めた経験が、後から効いてくる

自分の場合は、最初に担当したEC業務は商品マスタの作成でした。商品情報を登録し、データを整え、運営を回す。実行する力を使う仕事が中心だった時期です。

その後、広告運用やモール運営に関わるようになり、数字を見て改善する仕事が増えました。さらに、どこに予算を使うか、代理店に何を任せるかといった判断にも関わるようになっていきました。

振り返って思うのは、最初の実務が無駄だったわけではない、ということです。商品データがどう作られているかを知っているから、売れない原因を考えるときに商品情報の粒度まで疑えます。広告の入稿を自分でやっていたから、代理店のレポートを見たときに、何が省かれているかが分かります。

実務を理解したうえで数字を見る、改善する、全体を考える。範囲が少しずつ広がっていった、という感覚に近いです。実務スキルを卒業して次の段階に進んだ、というより、使う力が増えていきました。

施策から考えるか、原因から考えるか

分析・改善する力と、設計・説明する力の違いが出やすいのが、売上が落ちたときの考え方です。

先に施策から考えると、「広告を増やす」「クーポンを出す」という話になりやすい。もちろんそれで戻ることもあります。ただ、原因が商品ページや在庫、価格にあった場合は、広告費を足しても戻りません。

先に原因を考える場合は、集客が減ったのか、購入に至らなくなったのか、リピートが落ちたのかを分けてから、打ち手を選びます。順番が違うだけですが、使う予算も、次に検証できることも変わります。

私自身、自分の仕事の質が変わったと感じたのは、広告運用を覚えたときでも、楽天の運営ができるようになったときでもありませんでした。売上が伸びない理由を、自分なりに分解して説明できるようになったときです。同じ売上減少でも、会社によって打つべき手は違います。その違いを言葉にできるようになると、提案の中身が変わりました。

どの力が評価されるかは、会社と役割によって変わる

「この力があれば市場価値が高い」と言い切ることはできません。評価は、会社の規模やEC事業の位置づけ、任される担当範囲、これまでの実績、そして募集されているポジションによって変わります。

たとえば、実行を任せられる人を探している会社では、正確に速く回せることが決め手になります。改善を期待している会社では、数字を見て打ち手を出せることが求められます。EC責任者を探している会社なら、予算や利益まで含めて判断できるかを見られます。EC責任者とEC担当者の違いでも触れていますが、同じEC担当という名前でも、求められる力の重心はかなり違います。

評価のされ方そのものをもう少し広く整理したい場合は、EC担当の市場価値とは何かもあわせてご覧ください。

次に取りたい経験を、今の仕事から探す

3つの力のうち、どれを次に伸ばすかは、自分がどの方向へ進みたいかによって変わります。人やチームを動かす方向、EC領域を深める方向、事業として判断する方向。その違いはEC担当のキャリアパスで整理しています。

方向が決まったら、次の経験は、必ずしも転職しなくても取りにいけることがあります。実行が中心なら、数字の報告に自分の仮説を一行添えてみる。分析まではしているなら、施策の優先順位を自分で決めて、その理由を残しておく。改善まで回せているなら、予算の配分や代理店との分担の話に入ってみる。

今の環境でそれが取りにいけるかどうかは会社によります。判断の仕方は今の会社で市場価値を上げられるか確認したい5つの条件で扱っています。

ECの仕事で使う力は、実行する力、分析・改善する力、設計・説明する力。どれが上ということはなく、担当範囲が広がるにつれて、使う力が増えていきます。いま自分がどの力を使っていて、次にどの経験を取りにいくのか。そこが見えていれば、勉強する内容も自然と決まってきます。


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自分の現在地を整理したい方へ

スキルの棚卸しだけでは、自分の構造理解がどこまで通用するかは見えません。いまの現在地を客観的に把握したい方は、EC担当のキャリア現在地診断もご活用ください。所要時間は約3分です。

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この記事を書いた人

EC Career Lab運営者

EC領域で約10年。メーカーEC、ECモール企業でのメーカー支援(100社以上)を経て、現在はメーカー側で複数モールを統括し、月商1〜2億円規模のEC事業を運用しています。

メーカーECの実務とキャリアについて、現場での経験をもとに発信しています。

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